カーン!
story05
お行儀悪く、彼はお茶碗をお箸でぶったたいた。思わずびくりとしながら隣を見ると、茶色く長い尻尾のような髪を揺らしながら、「ううううう」と呻いている。「さすけぇ、ひどいでござる………」
カンカンカン! 太鼓のようにリズミカルに叩くお茶碗が甲高い声を出した。
「さ、佐助くん………」
「ダメ」
「佐助ぇ………」
「凄くダメ」
「幸村さん、可哀想だよ佐助くん!」
「かなりダメ」
「ぬうう、腹が減ったでござるー!!」
グググググー!
可愛らしいとはとても表現ができない、猛々しい、男らしい音が、幸村さんのお腹から聞こえた。
ひえーん、と今にも泣き出しそうな程ぐうぐうと聞こえるメロディに、思わず顔をしかめながら、ここはぐっと拳を握り、佐助くんに抗議する。
「佐助くん、幸村さんも一緒に晩ご飯たべたいんだよ!」
「食べたいでござるー!」
「だめだっつの大将が家で待ってんでしょ! ほら電話貸してやるから迎えに来てもらいなさい!」
「親方様には、殿の家で、佐助の手料理を食べてくるとお伝えもうした!」
「なんで変なとこで手際いいのこのおバカ!」
スコーン! と幸村さんのおでこにしゃもじが直撃に、彼は「ふんぬぅ!」と声を顔で気合いを入れながら、顔を微動だにもしなかった。「おおお」とパチパチ拍手を送ると、ちょっと痛かったらしい。右手でさすさすとおでこを撫でる。
「ほら旦那、帰った帰った」と幸村さんの背中をぱたぱたとはたくように、佐助くんは彼が座る椅子へと近寄った。幸村さんは、へにょんとした表情で「む、むぅ……」としょぼりと立ち上がる。ぐるぐるぐる………すさまじい腹音だなぁ、と関心しそうだ。
私は佐助くんの袖にきゅうっとつかまり、じぃと見詰めた。まだ何もいっていないのに、彼は「うっ」と嫌そうに顔をしかめる。
「佐助くん」
「だめだめ、男に手料理なんて俺ヤだよ」
「じゃあ、私も一緒に作るよ」
「もっとだめ!」
予想以上に強い言葉にビックリして手を放すと、「あ、や、ごめん」と慌てたように彼は私の手のひらを引っ張った。
じんわりと暖かい熱に、ぎゅうっと握りしめると、「う」とまた佐助くんが短く息を吐く。
ちろり、ともう一回見上げた。幸村さんと一緒に。ちろり。
あー、と佐助くんは短くため息を吐いて、「今日だけだかんね」と呟き、そそくさと台所へと向かう。思わず幸村さんとワッ! とお互いパチン! と手を合わせて、佐助くんへの感謝の意を表そうと、大声で叫んだ。
「ありがとう、おかあさーん!」
「嬉しいでござる、ははうえー!」
「うちにござる口調の子どもはいません!」
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1000のお題 【935 肝っ玉母さん】
2008.10.22