ちくちくちくちく

story06



「なにやってんの?」

ひょっこりと顔を出した佐助くんに、「んむ?」と首を傾げる。
「………なにって、えーと」「あ、見れば分かるんだけどね」 じゃあ何で聞くの? とまたまた首を傾げてしまった。そうすると佐助くんはやんわりと微笑んで、大きな手のひらを、ぽんと私の頭に乗せる。
うお、とぐらついた頭をしっかりと固定すれば、面白そうに、またぐいぐいと頭をひっぱった。

「さすけくーん、やーめーてー」
「悪い悪い。うーん、だからさ、なんでそんなの編んでんのって、俺様聞いてるんだよ」


私の手の中には、長細い菜箸みたいな棒が二本。
もしかしたらドラムのスティックにも似ているかもしれない。間近で見た事がないから、なんともそれはなんともいえなかったりするんだけど。

その二本の菜箸っぽい棒から、ぐうんと流れた毛糸のかたまり。深い緑色は、手芸屋さんで一目惚れしてしまったものだ。

気のせいか佐助くんはソワソワと私の隣に座り込んで、マフラーになりかけの物体を、じぃっと見る。かいた胡座を動かす姿が、やっぱり何だか落ち着きない。
「どうしたの、佐助くん」

一体手を止めて、彼をじーっと見てみると、「ん、えっ」と彼らしからぬ、どこかおマヌケな声と、半分にやついたような口元で私の顔を見た。彼もその事にはっと気づいたのか、ぱんぱんと右の手で口元をひったたく。
「………なんでもないよ?」

嘘くさいなぁ、と思いながらも、まぁいいかと黙々と手を動かしていると、中々上手くできない。なぜだかへにょりと傾いたデザインになってしまっていて、とってもぶさいくな感じだ。

「むー……」

ひょいと宙に浮かしながら、それを見ていると、佐助くんが「あー、だめだめ」と私からひょいと編み棒を取り上げた。「手が硬くなってんだよ、ふんわりやらないと」 そのままちょいちょいと動かし始めた彼の手のひらを見て、「ダメ!」と思いっきり取り上げる。

むっとして見詰めると、「え、なんで」と彼はパチパチと瞬きを繰り返した。
「ダメなものはダメなの」

今度は手のひらが硬くならないように、とやんわりやんわりと編んでいく。それでも何だか変な感じになってしまって、私はひゅるひゅると毛糸をほどいた。
だから俺様がやったげるって、とひょいと手のひらを出す彼をキッと睨むと、佐助くんは手前に押していた身体を、すごすごと元に戻す。


暫くの沈黙に、やっぱりそわそわと、佐助くんが首を動かしていた。
なんなんだろう、とちらりと伺えば、彼としっかり目が合わさって、何故だか照れたように口元を覆いながら、ひょいと目をそらされてしまった。

「………佐助くん?」
「や、うん、あのさ」
「ん?」
「あー、その、俺が触っちゃダメなんだよね、それ」
「うん」
「それって、そのう」

やっぱりそわそわと視線を動かし、彼はごくりと決心したかのように唾を飲み込み、向き合った。



「誰かにあげるものだったりする?」
「ううん、授業で提出するだけ」


その途端、彼はへたりと崩れ落ちた、ように見えた。中途半端に地面へとたれた頭を固定させて、「あ、そう」と、どこか引きつってぐにょりとしたままの口元と一緒に、カラカラと乾いた笑い声を上げた。
なんだそんな事を気になってたのか、と「こんな下手なもの他人にあげないよう、大丈夫」と笑えば、何いってんの? とでもいうように、呆れたような表情と一緒に、長い長いため息を吐かれてしまった。

「佐助くん?」
「あー、もういいや。、それ俺にもちょうだい」
「ん、何を?」
「毛玉と編み棒。予備があるでしょ、ほらほら早く」

ちょいちょいと突き出された手のひらに、まぁいいか、と念のためと余分に持っていた分を、はい、と佐助くんの手のひらの上へとちょこんと置いた。
彼はそれを見ると、慣れたような手つきで私とまるっきり同じ作業を始めた。

んんん? と首を傾げれば、「俺様だって暇だもん」と視線を動かさずに、黙々と手を動かす。
よどみのない手の動きに、やっぱり佐助くんって器用だなぁ、と惚れ惚れしてしまうと、彼はほんのちょっと悪戯っこのようにくいっと口元を動かして、「できたらあげるよ」とどこか嬉しそうに呟いた。

「誰に?」
に」
「何で?」
「あげたいから」

それじゃあダメかな、と首を傾げた佐助くんに、ううんありがとう。と笑えば、うん、と優しく頭を撫でられて、何故だかとっても、ほんわりした気分になった。



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1000のお題 【398  母さんが夜なべをして・・・】

2008.12.08

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