送ってあげようか。そう訊かれた。
story07
部活が遅くなったものだから、先輩と一緒に帰る事になった。偶々帰り道が同じだという事で、トコトコと横に並び、私よりも高い身長なはずなのに、いつも佐助くんで慣れてしまっているのか、何となく低いような気がしてしまう。
特になんの話題に盛り上がる事もなく、先輩の家の曲がり角まで来たとき、「ありがとうございました」「いえいえ」 とお互いぺこんと頭を下げた。そしてくるりと反対を向いた、そのときだった。
「あれ?」
聞き慣れた低い声に、彼はこくん、と首を横に倒して手に持った黒い鞄を肩へと引っかけるように持っていた。
「佐助くんだ」
「うん、今帰り?」
「うん」
じゃあ一緒に帰ろうか、と彼ははー、と白い息を口から出して、ちょいちょいと鼻を手の甲で触る。ほんのちょっと赤い。寒いねぇ、と首もとに巻いたマフラーを佐助くんに巻き付けようと背伸びをすれば、「こらこら、それは俺様があげたやつでしょ」とぽこりと頭を叩かれてしまった。「そっか」
改めて暖かい薄い赤色のマフラーを口元で覆うと、うん、と彼は嬉しそうに笑う。
のんびりとした雰囲気に、のんびりとお互いの歩調を合わせて家へと向かった。真っ直ぐに伸びた道を覆うようにできた塀の影は、すっかりと暗い辺りへととけ込んでしまっていて、空にぽこんと浮いた真っ白い月明かりが目にくらむ。
なんだか新鮮だなぁ、と思ったときに、やっぱり彼もそう思ったのか、「なんだか変な感じだねぇ」とのんびりと語尾を伸ばした。
「うん。佐助くんと外にいるの、変なかんじ」
「だよね。いつも一緒にいるのにね」
「家だもん」
「うん、それじゃあ今度どっかに出かけようか」
「なんで?」
「新鮮なうちに楽しまなきゃ」
「うん?」
ハー、と寒いそうな息を吐きながら、彼は「そういえば」とぽつりと呟く。私は、ん? とやっぱり高い佐助くんの顔を見上げるようにしてみれば、茶色い髪の毛をカシカシとひっかいて、「だめだよ」とちょっと怒ったような口調でちろりと私を見る。
何がだろう、と無言で首を傾げれば、「もう遅いでしょ、危ないからもっと早い時間に帰ってきなさい」とぺしりと撫でるように私の頭をひっぱたいた。
「だって」
「だってじゃありません」
「部活が」
「言い訳はだめ」
「危なくないよ」
「暗いでしょ」
「送ってもらったもん」
「誰に」
「先輩」
「男?」
「うん」
すると、佐助くんは「んー」と濁点を打ったような言葉の濁り方で呻いてぎゅう、と強く鞄を握ったのが見えた。
「うーん、まぁいいけどねぇ。いい人だった?」「うん、部長さんだもん」
佐助くんは足下の小石をかんっと足で弾くと、塀に当たって、カラカラと石が音を立てる。
よし! と意気込んだように彼は頷いて、帰ってきた小石をまたカンッ! と足のさきっちょで弾いた。「にはこの言葉を教えておきます」
「男はおーかみなんですよー。危機感をもちましょー」
「えー」
「えーじゃない。復唱」
「うえー」
「うえーじゃない。これ重要」
佐助くんは、長い指をぴんっと伸ばして、ちっちっち、とまるで振り子時計みたいにそれを揺らす。
「これも情操教育の一環です」
「おかあさん…」
「こら!」
「(な、なんて身勝手なんだ…!)」
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1000のお題 【388 大人気ない】
思わず情操教育の意味を調べちまったぜ……!
広辞苑すごい。
(広い意味で見れば正解?)
2008.12.08