暖かくなってきまた。
story10
「つまりは花見の季節でござる!」
ぬおおお! と気合いを付けたかのように飛び出した彼の拳に乗ってきた台詞は、中々に可愛らしかった。
「うーん、私は一体何をしているんだろう」
「細かい事を気にすると、大きくなれぬぞ」
よしよし、と大きな手のひらで撫でられて、幸村さん曰く親方様と呼ばれた、どっしりとした体つきに、野太く大きな、声は、確かに親方様だなぁ、とうんと頷いた。
時々空からこぼれ落ちたようなピンク色の花弁を、ゆっくりと手に取り、うふふと眺めてみれば、レジャーシートに乗せた大きなお弁当越しに座った佐助くんが、「いいお天気だねぇ」とふいと空を見上げた。燦々と落ちる太陽の光が、木々の葉っぱとピンクの色を通り越して、ぱっと手のひらに散りばめられる。「うん」
遠くで聞こえるアメリカ人発音(とでもいえばいいんだろうか)ヘイヘイ連呼しているお兄さんと、幸村さんはビシビシと拳を唸らせ合い、うーん、元気だなぁ、と水筒から取り出したお茶をずるずると啜れば、はっはっは、と親方様がどこからか取り出したのか、大きな扇子をパタパタと自分であおいだ。
そしてピシッと手のひらでそれを閉じると、「若いとは、よきことよ!」「元気がありあまってるだけだと思いますけどねぇ」 すかさず佐助くんのツッコミが入る。
オールバックの顔にビシリと大きな傷を持ったお兄さんが、お弁当へとお箸を伸ばし、「中々……」と一人コクコクと頷いている。
まったくもって、佐助くんの交友関係というか幸村さんの交流関係は不明だ。一体なんの共通点があるんですかと訊きたくても、何故だか訊けない。
私はむごむごと口を動かしたまま、オールバックさんと同じように、ちょいとお箸を伸ばした。冷たくっても尚美味しい佐助くんの素敵お弁当に、むううとほっぺたを転げ落としそうになりながら、ちょいちょいと小皿へと盛りつける。
「これは、と佐助が持ってきたものだったか」
「ん、そーですよ」
親方様も、お箸を伸ばしつつ、うむうむと頷いている。きっと満足のいく出来だったんだろう。するとすかさず彼はその大きな手のひらでバシバシと私の背中を叩き、「この腕ならば、よき嫁となるだろうよハッハッハッハ!」 私はごほごほとむせそうになりながらぶるぶると首を振る。
「い、いえ…」
「照れるな照れるな」
「ち、ちがいま、すゲホッ」
「ちょ、大丈夫!?」
「もらい手の方も、きちんとおるではないか」
どこか生暖かい目線と共に、オールバックさんと親方様は、佐助くんをじいっと見詰めた。そんな視線に、佐助くんはどこか照れたように頭をひっかき、「いやいやいや」 そんな空気の中、びしっと私は割り込んだ。「これ作ったのは、佐助くんですよ」
ちょっとした静かな間が合った。
ごほん、と親方様は静かに咳をつき、「よい嫁となるな佐助!」と台詞を言い直す。
「そ、そうですかぁ…」 どこかローテンションなままガリガリと頭をひっかきつづける佐助くんに、私がいったら怒るくせに何故親方様だと怒らなんのだ! 怒りのあまり手を伸ばして、ぐいっとぽっぺたを力の限りつまんだ。
「あいたっ! なにするの!?」
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1000のお題 【154 問答無用】
季節を先取り(パート2)
2008.12.21