プリントを貰いました。

story11




「うーん、どうしよう佐助くん」
「一体何がさ、あれま進路希望。も大きくなったもんだねぇ」
「しみじみいわない!」

ていっと佐助くんのお顔にくっつけるように両手を出せば、彼は軽くそれを受け止めて、ふうん、とありきたりなわら半紙をマジマジと見詰める。

「どうしよう」 もう一回、ちょっとだけ泣きそうになりながら呟けば、佐助くんは私の手のひらを掴んだまま、「……うーん、どうしようっつってもねぇ、俺のお母さんじゃないし、ご近所のお兄さんだし、下手な助言はできないなぁ」 とぐっさりと貫く言葉を吐いてくれた。

じゃあお母さんに電話した方がいいかなぁ、首を傾げれば、いやいやこれはの希望なんだから別にいいでしょ。と簡単にかわされる。
それでも、自分の進路についてだ。まぁまぁ気楽に、好きなこと書きなさいよ、とぽんと肩を叩いた佐助くんに、コノヤロウあんたが気楽すぎだい! と思いながら思いっきりお腹へとくらわせようとしたパンチも、軽々と避けられてしまった。

「参考までに、佐助くんはどんな事書いた?」
「うーん、俺様?」
「そうそう!」

佐助くんは大げさに首を振り、何かを思い出すかのように肩を組む。そんなに昔の事じゃないんだからすぐにぱっと答えが出るだろうと考えていたのに、意外にも長く空いた間に、私は思わずごくりと唾を飲み込んでしまった。


「忍者になりたい」
「なんで!?」
「俺様小学校の文集にそんなこと書いた気がする」
「そんな古いこと訊いてないから、訊いてないですから!」
「でもねぇ、参考になんてなんないよ、が自分で考えなきゃ」

やっぱりそうかなぁ、とううんとうなり、それでもやっぱり、と助けるように佐助くんを見上げれば、彼はしょうがないなぁ、とポリポリと頭をひっかいた。
「じゃあ俺からなんか提案してあげようか?」「うん、うん!」

面倒くさげに揺れていた瞳が、ぴーん、と一瞬鋭く光り、思わず「え、なんでそんなに真剣なの?」と一歩後ろへと逃げだそうとすれば、ぐい、と右手を捕まれ、引き寄せられる。


「お嫁さん」


バカにしとんのか!

流石の私でも、がおー! と腕を振りながら、「相手がいません相手が!」と怒鳴り上げた。ゆきむらー! おやかたさまー! にも今なら負けない。
すると佐助くんが、私にも負けない剣幕で、右腕を引っ張る要領で、パチンと私の両頬を柔らかく包み込む。
「いるじゃない、ここに」


「ええ?」と首を傾げて、何をいっているんだこの人は、と考えたとき、ピン、と気づいてしまった。
ほんの少しずつ熱くなっていく頬に、人をからかうにもほどがある、と思う反面、じー、とこっちを見詰める佐助くんに、パクパクと口を開いて閉じる。「………、い、いやいや、いや」 案外声は乾いていた。「ん、どったの」「それって、」「うん、」


「ほんき?」



にっこりと、彼は笑った。



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1000のお題 【328 返事がない】

2008.12.21

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