あれから一週間、佐助くんと会っていない
story14
これだけ長い間、佐助くんと会う事がなかったのは、久しぶりだった。もしかしたら初めてかもしれない。きっと小学校の自然学校が最後だ。
けれども家には晩ご飯の準備はしっかりしてあって、きちんと綺麗にサランラップがかけてある。まるで俺様今日忙しいからの相手できないんだよね、ごめんね、とでもいいたげで、なんてことのない日常のように思えたけれども、事実、違うのだ。
私が悪いのだ。佐助くんと会う事ができないからだ。
「う………」
ほんのすこし、泣けてきた。
好きってなんだろう。友達が持っていた少女漫画に、「きみの事は妹としか見れないよ」とふられていた女の子がいた。私にとっては佐助くんがそれで、まさか妹なんかではないけれど、お母さんで、もしかしたらお父さんで、一番近いのはお兄さんだったかもしれない。
つまりはきみの事はお兄さんとしか見れないよというヤツで、そしてそれは私は佐助くんの事を、そういう意味では好きではないという事な訳で、彼をふってしまうという事な訳でもあって、でも本当にそうなのかも分からなかった。
私は小さくソファーにうずくまって、うえええん、と情けなく涙を零しながらごしごしと服の袖で目尻をこすると、とてもとてもひりひりした。
いつもなら、きっとこの時間、佐助くんがやってくるはずなのだ。けれども彼は来ない。
そしたらまた悲しくなって、次から次から溢れてくる涙をぬぐい続ければ、苦しくて息が出来なくなった。
何で来ないんだろう。
もちろん、私が逃げたからだ。
もしかしたら、このまま佐助くんは、ずっとやってこないのかもしれない。
そう考えれば、心臓がどくりと動いた。
まったくもって、考えていなかったことだけれど、それは、(そうかも、しれない)
だって私は逃げたのだ。佐助くんを避けたのだ。そんな風にして、佐助くんは、一体どう思ったんだろう。いやな子だなぁって、と思ってしまったかもしれない、嫌われたかもしれない、嫌がられたかもしれない。
どんどん速くなる心臓の音に、そんなの嫌だ、と自分勝手な事を考えた。
自分から佐助くんから逃げたくせに、佐助くんから逃げられるのは嫌だなんて、私はなんて最低なんだ。
けれども、それだけは嫌だった。
考えれば考えるほどぼろりと涙が溢れてきて、ぎゅうう、と体育座りで、自分の身体を抱きしめて、膝で顔を覆わないと、辛くて辛くて、つぶれてしまいそうだった。
「さ、さすけくん、」
「ん、なに?」
当たり前にも、ぽつりと返ってきた返事に、私はとてもビックリして、ひょいと顔を上げた。
するといつもと変わらない表情をした佐助くんが、いつも通りにその場にいて、「あーあー、、目が赤くなっちゃってる、こすっちゃだめだよ」と冷たいタオルを私の目元へと、ゆっくり寄せた。
私は思わず佐助くんの右手をぎゅうと握って、そのままぐいっとひきよせる。
「おわっ」 そんなことは予想もしていなかったとでもいうように、いとも簡単に彼の顔は私の胸へとくっついて、佐助くんの頭をぎゅうと抱きしめるように、抱え込んだ。「こ、コラコラさんお兄さん怒っちゃうよ」
そんな彼の言葉に、私はビクリと震えて、ぽろぽろっと涙が溢れた。
「や、やっぱり、嫌いになった?」
「はぁ?」
何いってんのこの子は、放しなさい、という彼の言葉に反比例するように、私はもっとぎゅうっと抱きしめた。
「あーもー、女の子がこんなことするんじゃないの! 放しなさいったら」
「や、やだ!」
「なんで!」
「放したら、佐助くんいなくなる!」
暫くの間に、佐助くんは静かに「いなくならないから放しなさい」 と言葉を呟き、私はやっぱりポロポロと泣いてゆっくり手のひらを放した。すると佐助くんは苦笑いをしたような表情で、私の隣へとどっかりと座り、ほらほらおいで、とぱっと手のひらを広げる。
私は暫くどうしようかな、と宙へふらふらと視線を泳がしたのだけれども、うんと頷いて、さっきの体勢と、丁度逆転になるようにぽすんと頭をよせた。
とん、とん、と静かに佐助くんの手のひらが背中を優しく叩いて、「こんなに泣いちゃって、可哀想に」ともう片方の手のひらで、よしよしと頭を撫でる。
「俺様がを嫌いになるはずないでしょう」
そりゃあ、避けられるのはしんどかったけどさぁ、と笑いを含んだ言葉にほっとして、ぎゅ、と佐助くんのシャツを手のひらで掴んだ。「でも、私、佐助くんのこと、結婚したいとかみたいに、好きじゃ、ないよ」「うわーお、突き刺さるオコトバ」
まぁ正直でいいね、と彼は何故かよしよしと頭を撫でる。
「あのねぇサン、俺にいったかな、キスして欲しいって」
「い、いってない」
「付き合ってくださいともいってないでしょう」
「うん」
「えっちなことしてとかも」
「………」
だからね、と佐助くんは言葉を短くきって、ぎゅう、と抱きしめた。
「だからね、はそんなん気にしなくていいんだよ」
大丈夫だから、と何度も彼は呟いて、「俺様いったいどれくらい待ったと思ってるの。これからもずーっと待てるから、大丈夫です。一緒にいれるだけで幸せなんで、襲っちゃったりなんかしないし、ちゅーしてとかえっちしてとかも頼まないし、ご飯くらいいつでも作ってあげる。お母さんもお父さんもお兄ちゃんも嫌だけど、の佐助くんとしてなら、いつまでもいてあげるから」
だから俺と一緒にずっといませんか?
と問いかけられた彼の台詞に、私は何も考える事もなく、うん、と頷いた。
多分ちょっと、嬉しかった。
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1000のお題 【651 色よい返事】
2008.12.21