※ 多少下品&やらしいお話


ディックとはうまくいっていると言えばうまくいってるし、うまくいっていないと言えば、うまく言っていないような。


ディックはへらへらと笑いながら、赤髪の少女に話しかけていた。中々の美人さんだ。将来が楽しみ。一人称がぼくとか可愛いですなぁ、とにかにかしながら、「ねぇねぇテンガちゃん、ここの城の中案内してくんない? ねーねー」「あ、ディックさん発見です!」「うおう……」

「あ、ー」とテンガアールはへとぱたぱた手のひらを振る。がくりと首を落としたディックが、恨みがましげにを見つめた。ちくしょう。まいたと思ったのに。
結局用事があるから、と言うことで去って行ってしまった美少女の背中を見送って、ディックは悲しげなため息をついた。それにしてもこの女、日に日に追跡が上手くなってやがる……と眼帯に隠されていない方の目をぎゅっと細める。

は何を勘違いしたのか、てへてへと照れ始め、頭をかいている。何故照れる。「……あんたさー、なんつーか、日に日に、上手くなってるよな」「はい?」「俺見つけんの」「はい!」

はにこーっと力のかぎり笑った。「ディックさんがいなくなったら、取りあえず美人さんを探せばいいってわかりましたから!」

こいつ、わかってやがる。
ディックは生唾を飲み込んだ。行動パターンを把握されるのってちょっぴり恥ずかしい。


ある日のことである。

「腹へったー」
ディックはくたりとテーブルの上に顔を乗せた。はいはい、とが笑っている。「メニュー見るのもしんどいさー」「じゃあディックさんはお肉ですね。すみませーん、焼肉セットひとつー」「わーい。やきにーく」

ここのメシは上手い。食事はディックの楽しみの一つである。それになんとまあ、焼肉セットだ。焼肉はディックの好物のうちの一つである。いいもん頼むじゃないか、やきにーく。とディックがテーブルにつっぷしたままニヘニヘしていたとき、彼はハッと気付いた。
焼肉セット。これ、本当に偶然か。

既にサラダをもぐもぐと頂いていたを見た。こいつもしかしなくとも、俺の好物知ってやがる。「そんなに見たってあげませんよ」「いらねーよ。男は黙って焼肉だっつの」
ディックはふはーっとため息をついた。ブックマンに、うまくやれとは言われたものの、うまくやりすぎるのは問題だ。自分自身、けじめが曖昧になってきていることを感じていた。
どうしたもんか。ディックはやってきた焼肉セットに、「うひょー!」と歓喜の悲鳴を上げながら考えた。よし、しょうがない。ここはあれだ、


押し倒そう。



「……あのー、ディックさーん?」
「うん? なにさー?」
「どいて頂けたら」
「いやさー」


ディックはにこにこしながらを適当な部屋の中に連れ込んだ。彼女の両手を片手でぬいとめながら、もう片方の手をごそごそと動かす。「すみません、ディックさん、何がしたいんでしょうか」 床に頭を乗せながら、は困惑した顔をした。「何って、ヤっちゃおうかと思って」 ディックはまんべんの笑みで答えた。「はい!?」

一応弁解のために言っておくが、何もこれは本気の行為ではない。適当に押し倒して、適当に脅しをつければ、の方からディックを避けてくれるのでは、と考えたのだ。この間薔薇園にて同じようなことをした訳だが、あれくらいで顔を真っ赤にさせていた彼女だ。少々刺激的なことをしてしまえば、パーン、と頭の中身が破裂してしまうに違いない。(役得役得)にへっとディックは心の中でにやついた。


さて、どこまでしたらいいものか。さすがに最後までしてしまうのは犯罪だ。お互いの合意の上でなければしないとディックは心の決めている。そのギリギリ手前。それもどうかな。適当に脱がせて揉むくらいならセーフかなー、と一番初めの相手の武器を腰元から抜き取る作業から始めることにした。意外と使いこまれている長剣だった。

かしゃん、と音をならして剣を部屋の端へとほっぽり出す。「あー!」とが叫んだ。「はいはい静かにー」とディックはの口元に手を乗せる。が何やらもごもご言っている。その所為で、手のひらに彼女の唇がふにふにのっかかる。舌がぺろりとディックの手のひらをなめた。

むらり。

ディックは自分で組み敷いた女性を見ながら、(あ、別に最後までやっちゃってもいいかも?)とぼんやり考えた。ようは同意してもらえばいいのだ。無理やりじゃなければいいのだ。じゃあまあそういう感じで、とディックが実行に移そうとした瞬間、彼は強かに鳩尾を膝でつかれた。「ぐへ」

手の拘束が緩んだ瞬間、はディックの腕を掴み、なんとも器用にも、ぐるりと体を回転させ、今度は彼女がディックを組み敷いている。ディックは一瞬、あれ、もしかしてそっち攻め? と考えたのだがそんな訳がない。はよっこらせとディックから立ち上がり、部屋の端へと落ちている剣を拾った。ぎしゃあああん。嫌な音を立てながら、僅かに緩んだ柄をはめ直し、彼女の腰へと獲物をさす。「……あ、あのー、、さーん?」

ディックは肩をびくびくと小さくさせながら、彼女の背中へと声をかけた。やばい、調子に乗った。一瞬理性がとんじゃった。痛む鳩尾を押さえつつ、だらだら流れる嫌な汗が止まらない。


はなんてことのなしに振り返った。そしてもう一度剣をぎしゃあああん、と鳴らしながらひきぬいた。ディックはびくーん! と震えあがる。カンベンしてー。「すすすすすみませんっしたー!」 彼は力の限り謝りながら両手を合わせて頭を下げたのだが、と言えばなんてこともなしに「はい? あ、ちょっと待ってください、剣がうまくはまんなくて……よいしょ」 ぎしゃあああん。

「え、うん? おこってねーの?」
「はい? 怒るだなんて、まさかそんな。ディックさんの冗談にいちいち付き合ってたら体が持ちませんよー」

もうやだやだ、と片手をぱたぱた振る彼女を見て、ディックはうわあ、と口元に手を乗せる。こいつ、格段に自分の扱いに慣れてやがる。「まあでも、冗談はほどほどにしてくださいね。やっぱり次にしたら怒ることにします」 はにこにこ笑いながら扉へと手をかけた。「はーい」とディックは力なく返事をする。

なんていうか、思いっきり負けている。
ちくしょー、とディックはうなりながら、とぼとぼの後をついていった。
ちくしょー。


2011.05.31
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