6 story
ただのペンギンの夢の中



うん、これ夢だ。


いつも通りな学校の制服を着ている自分の足元を見てみると、このところ坊ちゃん坊ちゃんと言われているものだから、寧ろ違和感となりそうなスカートをはいた二本の足がひょろりと飛び出ていた。

寧ろあっちが夢の中だったらいいのにな、と思ってしまったけれどもこれはただの夢だ。「、宿題やってきたなら写させてよー」という友人の声に、「はっはっは宿題どころか筆記用具すらないやー!」と主張したところで目が覚めた。なんだかわびしい。




「テッド釣りしようよ釣りしようよ釣りしようよー!」
「なんだよ坊ちゃん、のっけからぼうに」
「いやこの頃なんだか暇で」
坊ちゃん基本暇人だよな」

なんかすることないの。と言われて、はははー! と頭をひっかいた。痛いところをついてくる。
やることと言えばお勉強くらいで、それも何故だかすでに頭の中に入っている内容ばかりなのだ。これは多分、元の坊ちゃんの頭がいいんだろうなあ……とうすうす気づいてしまっているのだが、ちょっとだけむなしくなる。チートって悲しい。

ついでに前々で坊ちゃんは棒術の訓練もしていたそうなのだけど、師匠がどこかへ行ってしまってからというものの、自主練習のみしていたそうだ。この頃それはさぼっている現状なので、そろそろ本気をださねばな、とテスト前の言い訳のように毎朝考えている。「それはそうと!」

「釣りしようよ……!!」
「まったく意味がわからない」

っていうか俺は今からマリーさんとこの手伝いだからじゃーな、とこないだ買った服の上に上着を一枚着こんでバイバイと彼は私に手を振った。あ、ばいばーい……と同じく私も手を振りながら、いやいやいや、なにこの寂しさ何この暇っぷりと涙が溢れそうになる。やることあるっていいなぁ、いいなぁ、久しぶりになんだか動いてみようかなぁ。



「…………フッ!」

前々から気付いてはいたものの、きもちわるいくらいに体が動く。覚えていない型まで覚えていて、これは確実に坊ちゃんパワーだ、と考えさせられるものがある。洗濯物を外に干しに通りかかったグレミオが、「坊ちゃんせいがでますねー」なんていいながら去っていった。「グレミオー洗濯もの手伝おうかー」なんて声をかけてみても、坊ちゃんはどうぞ鍛錬に励んでください。とにっこり笑顔で断られてしまった。お手伝いしたい。

このまま棒をくるくる回していてもやっぱりむなしい上、原作を思い出してしまうので、はー……と庭さきで体育ずわりをしたあと、また、はー、とため息をついた。


「テッド、お手伝いってどうしたらいいのかな?」
「知らねーよお前この頃何なんだよ」
「いやテッドって、ほら、お手伝いのスペシャリスト……じゃん?」
「そんなスペシャル存在しない」

えーえーえー、よく色んなお店のお手伝いしてるじゃーん! とぐいぐい服をひっぱると、テッドは「生活のための必要最低限の行動だっ!!」と怒られた。

よっこらせとテッドと二人なんとなく正座のまま、「だいたいなんだお前お手伝いとか。グレミオさん手伝えよ。大変だろ」「手伝おうとしたら坊ちゃんにはもう私は必要ないのですねってヨヨと泣かれた」「それはきつい」「きつい」

「この頃暇でさーもー、ほんと。暇でさー」
「言っとくが俺は忙しいんだからな」
「みんなそうなんだよ。あーあー……」

いやまあ、グレミオだって手伝わせてくれるときはくれるのだけれど、あんまり彼のお仕事を取ってしまうと複雑な気分になってしまうらしい。ちがう。私はこんなのじゃない。もっとがっつりがっつりお手伝いをしたいのだよ……!
ふとテッドは、腕をくんだまま天井を見つめた。そして、んー……と目をほそめたあと、「それじゃあお手伝いするか?」とこっちを見つめる。「誰の?」「俺の」「テッドの?」「っていうかマリーさんの」




「ブギャハハハハハ!!!」

指をさしながら腹を抱えて笑い続けるテッドを見て、さすがに恥辱に顔が真っ赤になりそうだった。むーっとスカートを両手で握りしめながらじろっと彼を睨む。「似合う似合う、予想以上に似合う。似合いすぎて笑える」「おだまりっ!」

これはなんだろう、正夢だろうか? まるで女の子のような格好と、どこぞのおとぎ話の主人公のようにかぶった真っ白い頭巾
を、頭じゃなく覆面のごとく顔を覆ってやりたくなる。
ふわふわスカートが似合うのは当たり前だ。なんてったって本物の女の子な訳だから。
どういう訳か何度言ってもみんな忘れてしまうけれど、私は正真正銘の女なのだ。そんな訳で「似合いすぎだろ腹いてぇ」とごろごろ床を転げまわるテッドにはそろそろ多少の殺意が湧いてきた。

「だいたいなんで女装なんですかねさっさとマリーさんのお手伝いに行きたいもももものですね!」
「なんでお前そんなに動揺してんだよ。だってそりゃあ、いきなりマクドール家のご子息がお手伝いにまいりました、なんてなったら大騒ぎだろー?」
「だからってひどいよー」

っていうか女のプライドがずったずたですが。

「いいじゃん似合う似合う」
とぽこぽこ私の頭を軽く叩いてきたテッドに、似合うのは当たり前ですからね! とお腹の中の台詞を叫びたくてたまらなくなったけれど、そこはぐいっと我慢して、「でっしょー!? 似合いまくりですよね!」「あとは胸があれば完璧だな」「ああああああるわぼけー!!!」



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2011.02.28