12 story
ペンギンちょっとした違和感を持つ



なんだかこの頃自分がおかしい。
「おーい、テッドー、釣れた釣れた」とニコニコ手を振っているどこぞのお坊ちゃんに、そりゃあよかったですねぇー。と適当に手を振り返した。そしてやあ坊ちゃん、あんなににこにこ笑っちゃって、可愛いなあ。と一瞬思考がそれた後に、パーン! と両手で頬をぶったたく。

「て、テッドさん……何をしてらっしゃるんでしょうか……」
「今両頬に蚊が止まったんだよ」
「あ、ありえねぇー!」

俺はおかしい。



そんなこんなで帰り途、は盛大にずっこけた。昨夜降った雨のおかげで道がぬかるんでいたんだろう。ずべっと勢いよく滑ったをゲラゲラ指をさして笑っていると、俺まで滑った。ずべっ。

「おい……一緒にグレミオさんに怒られようぜ……」
「怒られてこようか……」
「二人で怒られるのなら、怖くない!」
「怖くない!」

あまりのどろんこ具合にお互い笑う気力もうせて、妙な連帯感を持ちながらマクドール家へとを送った。とりあえずグレミオさんはじっとこちらを見た後、「元気なのはいいことかと思いますが、もう少しお上品に遊んでくれないものかとグレミオは思うのですがね!」とカッと瞳を釣り上がらせた。

す、す、す、すみませーん、なんてしょぼくれていると、グレミオさんはびしりと俺とに指をさし、「それじゃあちゃっちゃかお風呂に入っちゃって綺麗になってきてくださいね坊ちゃん方!」

「え……! ぐ、グレミオさん、俺もっすか!」
「テッドくんもです。ほらほら、体が冷えてしまいますよ。こうなると予測して、ちゃんとお風呂は沸かしておきましたから! 二人で入ってきてくださいね」
「ちょ、ちょ、グレミオォ!?」

あわあわすると俺に、グレミオさんはただ不思議そうな顔をした。いやあ、それはまずいだろ、まずい。どう考えたってまずい。「そりゃあまずいっしょグレミオさん!」 手のひらをばたつかせて何故だか真っ赤になり始める顔を覆うと、グレミオさんは目を点にした。

「まずいったって。何でです? お二人とも男の子ですし。たまには裸のお付き合いでもしてみたらどうですか?」
「え……あ、そうです……ね?」

一体なんで自分がまずいと思ったのか分からない。とにかくそれは恥ずかしいことで、まずいことだと思うのに、その理由が思い浮かばない。「……あれ?」と首を傾げていると、が俺の背中に頭突きを直撃させた。「い、いてぇー!」「ちょっとテッド! 流されないでよ! グレミオ私は女だって言ってるでしょー!?」

「……そういえば、そうでした……っけ?」
「そうじゃなくてそうなんですよ!」
「そ、それにグレミオさん。俺人に見せられない怪我がありますし! 裸はちょっとなーと」
「そういえばそうでした。考えが及ばすすみません」

わ、私が女だってのには納得しないくせに、そっちで納得するなー! とが憤慨したように腕を振りまわした。「はいはいすみませんすみません」とグレミオさんはを受け流すと、「じゃあ取りあえず、どっちかずつお風呂に入ってくださいね」と言われたので、俺は即座に挙手させていただいた。

なぜか分からないが、が使った後の湯船なんて想像すると赤面しそうだ。ありえねえ。
「じゃあテッドくんから」とグレミオさんにタオルを渡された瞬間、がくしゅんとくしゃみを一つした。「やっぱお前から入れ!」 そしてタオルをにつきわたして、彼女の背中を押して湯船へと連れていく。

「いや、テッドからでいいけど」
「いーからお前から入れー!」




この頃テッドが妙である。
お風呂からなぜか真っ赤な顔で上がってきて、「ちょっと長湯しすぎなんじゃないかね、きみは」と声をかけると、「三秒であがったったわ!」と真顔で返された。い、いや、それは早すぎだろ……カラスの行水すぎだろ……と突っ込みたくて仕方がなかったけれど、あまりの剣幕にごくりと言葉を飲み込んだ。



なんだか時々ぼんやりしているし、その割にはすぐに目を覚めたような顔をして申し訳な下げな顔をするし、「テッド、調子が悪い?」と訊いてみると、「んな訳ねー! 絶好調!」と顔を逸らしたまま答えられた。

この間テッドに向かって思いっきり泣いてしまったことを気にしているのかなあ、と思ってもそういう訳でもない。一体全体、どういう訳だ? と考えても考えてもわからない。
まあそれよりも私は別に考えなければいけないことが山盛りなので、まあいっか。と放置することにした。



テッドがいなくなってしまうことは寂しい。喧嘩別れをするようなことはしたくない、するべきじゃないんだとこの間気付いた。だったらどうするべきなんだろう。と頭を抱えていると、ピンときたのはテッドに事情を話してみるのはどうだろう、ということだ。もちろん、ゲームがどうたらということではなく、ウィンディがテッドを狙っているからと……「あ、駄目だ」

まずテッドがソウルイーターを持っているという事実を私が知っていることから説明しないといけない。テッドは絶対に認めない。自分が真の紋章を持っているなど、他人には絶対に口を漏らさない。そしてもし私がソウルイーターの一言でも言ってしまうと、彼との埋まらない、決定的な溝ができてしまう。
「も、どうしたら……」


私は頭をすっきりさせようと街を歩くことにした。解放軍の活動など、もうすでに始まっているのだろうか。解放軍の手を借りるのはどうだろう。「…………酒場」 マリーさんの酒場にビクトールがいた、ような気がする。
(あー、もっと原作のことしっかり見とくんだった……!)
後悔しても遅い。



私がふらふら道を歩いていた所為なのか、一人の男の子に肩がぶつかった。
「あ、ごめんなさい」「いえいえ」 彼は簡単に手のひらを振って去っていこうとする。あれっと私の中で何かが弾けたような気がした。「あのっ」

少年が振りかえった。見たことのある顔。黒い髪にバンダナをつけて、私と同じ年くらいの男の子は私を見て不思議そうな顔をした。「あ、あの、私、あなたと会ったこと、ありませんか?」
我ながら、なんてナンパみたいな台詞なんだと恥ずかしくなったけれども、それ以外上手く言えない。

「……多分、ないと思うよ」
「あの、でも」
「うーん、やっぱりわっかんないなァ……」

男の子はコメカミに人差し指をついた。「俺、この街に来たのは初めてなんだけどな。それでも?」「あ、そうなんですか……?」

男の子はポリポリと頭をかいた。そして、「名前を言ってくれたら思いだすかも」と朗らかな笑みをで人差し指を目の前に、ピンと立てる。


です。一応、・マクドール」
「一応? ああ、養子とか」
「そういう訳じゃないんですけど」

私が言葉を濁すと、ふうん、色々事情がありそうだね。と頷いた後、「やっぱり思いださないな。ごめん」と残念な声色を乗せた。そうか、と思う反面、いいやと私はくいついた。絶対違う。人違いじゃない、なんたって。「あの、あなたのお名前は?」「俺、俺は」


。名字はないよ」


夢の中に出てくる男の子と、そっくりだったからだ。



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ごめんなさい (´・ω・`)

2011.03.06