これが、俺の第一歩なんだ。
軽く吸い込んだ息は所々に途切れていて、ビビっているのか俺は、と情けない声を自分へと掛ける。
ビビっててもいいんだ、これが俺の第一歩なのだから。

ゆっくりと俺はドアノブへと手を伸ばす。




第1話  こんにちは、ご主人様




「あ、お帰りなさい」

パタパタとリズミカルに音をたてながら、一人の少年がやってくる。お帰りなさい、なんだそれは。いや意味くらい知ってる。けれどもなんてお帰りなさいなんだ。
しずかに、しずかに考えて、ゆっくりと流れる俺の思考は、取り敢えずいった。

ドア、しめとけ

ぱたん、と閉じられたドアを見つめながら、右へと視線を滑らせる。

橘 剣之助、と確かに書かれている表札。
念のために人差し指でつい、と触ってみたが、下から何かが出てくる訳でもない。

じゃあなんでだ

(…桜川鷹士さんだったか?)
兎に角この異常事態を、彼へと伝えに行くか。ちょうど、ため息をした瞬間。
ガツン、と大きな衝撃が俺の額へと走って、ゆっくりと辺りはフェードアウト。
近くで遠くに聞こえる声は「ああああ、ごめんなさいご主人様ー!」なんて泣き叫ぶ。

あれか、お前人がいるか確認せずに開けちゃったのか。
ご主人様ってなんだ。


俺にそんな奇特は趣味はない      なんて言い訳もする暇もなく、ああ



第一歩目がこれで、本当にいいのか、俺。