ふわりと浮いた意識の中で、

これが夢だったらいいと、何度も考えた


第2話  俺は認めない




頭にひんやりとした感触がある。ゆっくりと伸ばしたソレは冷たく絞られた一枚のタオル。
なんでこんなもんがあるんだ、と考えていたら、近くですすり泣くような声が聞こえた。

「ご、ごめんなさい…」

ヒリヒリと痛むデコを押さえて、うっすらと目を開けた先には、目を真っ赤にしていてる、ショートカットの銀髪の少年だ。きらりと輝くその髪は、何だか旨そうな色だなと思って、我ながら馬鹿な事を考えてしまった。
(…誰だっけ、コイツ)

こんな小柄で、声が高い少年なんて俺の記憶の中にはない。
唯一知っているといえば、その銀髪の髪の色、俺と同じ髪の色という事だけだ。

「ごごごご、ご主人様あ!」

俺が目を覚ましている事に気づいたのか、寝っころがっていた(どうやら布団に寝ていたらしい)俺へと体当たりするソイツ。予想していたよりも軽めの衝撃に心の中でほっとした。多分コイツの体重が軽いんだろう。

「痛いとこありませんか大丈夫ですかどうなんですかあ!」
「まずどけ、静かにしろ」

混乱しているのか、それとも元々なのか、恐ろしい速さで言葉をまくしあげるソイツ。邪魔だ、どいてくれ、男に押し倒される趣味は俺はない(もちろん女に押し倒される趣味なんてものもない)

そう俺がいうと、ソイツはしゅん、と犬の耳を垂れ下げたようにゆっくりと俺から離れる。
大人しくその場に正座したかと思うと、まるで俺を飼い主のように、(ソイツは犬のように)俺を見つめて、きゅるきゅると効果音が聞こえそうな程、何かを懇願する。

俺はというと、寝っ転がっていた体を布団の上に起こして、そいつの出方を待った。
けれどもソイツは一向に何も言わず、動かず、見つめるだけ。
その見つめは中々の破壊力で、騒がれるよりもたちが悪い。良心にぐさりと何かが突き刺さったのは、何故だろうか。

「…なんだよ」

何がいいたいんだ、お前は。と言葉の裏に含めて、じ、と見つめた。
すると、すん、と一回鼻をすする音が聞こえて、のろのろとソイツが口を開けた。

「だって、ご主人様が、静かにしろって」

ひーん、と泣き始めるソイツは中々…ウザイ。そう言えば、さっき静かにしろといったかもしれないが、コイツは果てしなくウザイ。

「泣くな、黙れ。ご主人様ってなんだ」

俺の言葉にぴたりと泣きやみ、それでも肩はふるふると震える。ひくっ、ひくっ、なんて響く音がもっと鬱陶しい。口を開けようとぱくぱくしているソイツに、ああ、と俺は一つ理解した。

「黙れは取り消しだ、ご主人様ってのは何かいえ」

ご主人様はご主人様です、と説明したソイツに、一睨み。

「自分は、ご主人様のお父様に雇われた、家政婦なんです」

だから、宜しくお願いしますね、ご主人様。


なんて      俺は認めない。