「わんこ、お手」
「わん」
「おかわり」
「わん」
「じゃあ伏せ」
「…きゅーん」
「あ、できないんだ」


第5話  騙したヤツ




なでなでなでなでなでなでなで
色んな意味で悲しくなってきた所に、何故かいた犬一匹
ふわふわ、外国犬、でかい。

どっちかってーと、自分は柴が好きなのですが、このこの人懐っこさには呆れてしまう。
かわいいです。

なでなで

かわいいです

なでなで

つーか、うちのマンションペットおっけー?

なでなで

ご主人様のばかやろう

なでなで

「何してんスかねぇ、自分」

密かな自分の囁きに、顎の下やらお腹やらをなでなでしているポチ君(只今心の中で命名)は何やら幸せそうにふんふんと鼻をならす。だてに何度もご主人様にお仕えしていない。
今までのご主人様の多くが、大型犬をお飼いになっていた。
おかげで犬の扱いなんてお手の物


「ちょっと、懐かしいかも」

今のご主人様はとっても気むずかしい。剣之助さん、といわなきゃ怒るし、硬派だし、パンツ洗うと怒るし。良いところといえば、好き嫌いをしなくて、きっちり朝自分で起きてくれる事。

フリフリのメイド服を着ていた自分の時代を思い起こしながら、今の自分を見つめてみる。親戚だと思われるように選ばれた髪の色、それだけで自分はここに来た(確かに珍しい色だけどさ)
何が嬉しくて、くんだ。

「…止めよっかな」
この依頼

ポチ君の耳をひっぱりつつ、思考に明け暮れると、色々とポチ君の方も(主に耳が)辛くなって来たらしく、何だか本気のキュンキュンコール。おおう、ごめんよ、ポチ君。

「ポチ君、きみの飼い主は一体どこだい?」

自分の問いかけに反応してか、ポチ君の耳がぴくりと動く。
くわっ、と上げた顔に「なんだよおい」とビックリしたが、見つめた先は自分の顔じゃなくて明後日の方向だ。


シュタイーン!


少し小さめの声だったが、たしかにこのコンクリート造りのマンションにはよく響く。

「…アイン、シュタイン?」

ぴくりとポチ君はまた反応して、今度見つめた先は自分の顔

「きみ、ポチくんじゃなかったのか」



騙したな、こんにゃろめ