今から遡る事ちょっと前。
ローランさんに渡された依頼書を、見つめに見つめていた、その時。


第14話  ちょっと待て!




「…ローランさん」
「はい、なんでしょうさん」
「依頼主は、」
「橘さんです」
「ご主人は」
「その息子さんになりますね」

じっくり、じっくりと薄っぺらい紙を穴が開く程見つめる。
確かに、確かに、そこに書いているのだ。


契約期間 : 一年間
依頼内容 : 息子である橘剣之助の世話、および、1人暮らしの理由追及
条件 : あくまで息子の日常に差し支えがないように、橘剣之助のイトコと偽る事
      住み込みである事
      銀髪の男である事(親戚だと思われやすい為)



銀髪の 男 であること。

「ちょっとちょっとちょっとローランさーん! の方に依頼とはいってましたけど、完璧に自分に男になれと!?」
「まあまあまあ、さん。これにはふかーい訳がありましてね」
「銀髪の男…山田さんとかどーでしょうか」
「山田さんは育児休暇を…」
「あー、ジェンダーはなくなりつつありますねー…じゃなくてっ、あれですか、人材がいないだけですか!!」
「そうともいいますね」

きらりと輝かしい笑みを浮かべながら、突き付ける契約書(つまり自分にそれにサインを書けと!)

「あちらさんの方には、了解を得ました。つまりは、バレなきゃいいんです、剣之助君に」
「は?」
「ほら、住み込みでしょう? 彼、どうやら硬派みたいでして…ちょっと恥ずかしいんですよ」
「なんですかその思春期万歳な反応は」
「だって思春期ですから」
「…っ!?」


あれから無理矢理書かされた契約サイン。
きっちりと書かれた、 男 として、橘健之助のお世話を、身を粉にしてさせて頂きますと書かされたあの日。


(ああなんか、話がずれてきているなぁ)


なんて思いながら、只今ご主人様のご飯を作らせて頂いています。



  


2006.10.17