楓さん来訪から数日後の事。
ピンポーン、とインターホンの音が響いた。


第22話  微妙な再会(彼女の場合)




「どちら様ですか?」
『はい私、桜川ですけど、橘くんは      
「あ、ごじゅじ、いやいや、剣之助さんはまだ帰っていないので、えーと…」
『あ、たいした用事じゃないんで、すみません帰ります』
「いやいやいや、もう少しで帰ってくると思うので、中でお待ち下さい」

え、そんな事   と続きそうな彼女の言葉をピシリと言いくるめて、どたどたと玄関へと向かう。よいしょ、とドアノブに手を掛ける自分の手が、一瞬、止まった。
(…桜川?)

どこかで、と考えて、そうか、と一瞬で考えが結びつく。
(鷹士さんの、苗字、ですかね)
つまりは管理人さんの苗字。

ううん、ともう一回考えてみる。ちょっと前、そう、ちょっと前、ご主人様が気になることを言っていた気が、するんですが。
何でしたかね、とトントンと頭を二回。うーん、と一回。

『鷹士さんの、妹に会った』

そう、それ。確か。
いもうと。妹。ありゃ、ありゃりゃ。
(ちょっと楽しみ、です)

ドアノブを握る手に、きゅ、と力が入って、ドキドキと胸の奥で心臓が歌ってる。あんまり待たせては悪いですから、と心の中で思うのを言い訳にして、勢いよく、ぐわっ、とドアを、開けた。


「あ、こんにちは」
「………こんにちは」


よ、横に大き、いやそれよりも、彼女はあの日、学校に(不法)侵入した時に、ばったりと倒れていた、それで、お腹をグーグーとならしていた、

「…あの?」

あまりの突然な情報の嵐に目を白黒させていた自分を、不思議そうな目で見つめる。「ごめんなさい、さ、中へ」と言葉を流しながら、ちょっと、冷静に、頭を落ち着けようと必死だった。
(そう、この人は、確か)
頭の中で情報を叫ぶより前に、彼女はふっくらとして愛嬌のある顔を、こっちに見せる。

「あ、ごめんなさい、私、桜川鷹士の妹、桜川ヒトミです。えーと、アナタは…」

「橘剣之助のイトコの、です」と口で動かしながら頭の中でそれを、リピート、アフター、ミー。妹、そうですか、妹ですか。


彼女を部屋の中へと入れつつも、この間ご主人様がいっていた、「あんなデカい制服」という意味が、やっと理解できたのだった。





  


2007.03.20