…自分は、今、何をしているんでしょうか


第24話  人間素直に生きようよ




自分は、今、久しぶりなスカートをはいていたりします。足の間からスースー入る風が、妙に気持ちわるくて、ぶるり、と一瞬。けれどもその震えは、きっと寒さだけからなのでは、ないと、思います。


ゆっくりと、歩く、道。
……頭が重い(きっとコレはカツラの所為ですね)

自分が、押しに弱いのか、それとも責任感が強いのか。どちらといわれると、恐らく両方な訳で。だから自分がこうして、ご主人様の学校にテクテクと向かっているのも、しょうがない訳で。

「あ、何故だか涙が」
霞んで前が見えない


けれども。霞んで前が見えないのは、きっとただの気のせいで、目の前にずずん、とそびえ立つ、ご主人様の学校から目を背けたい、きっと自己防衛の一種なのだと思いますが、ええ、そんな事をしても目の前の学校が消え失せる訳もなく。

「自分は、自分は、泣きたい、です」
もう泣いてますが。


よいしょ、と足を踏み出す。
二歩目を、また、よいしょ。

             不法侵入、完了(うわぁあぁああああん!!!)(こんな、こんな事、したくなか、なかっ…!!)(申し訳ありませんご主人様ぁああぁああ!!)

「自分は、職務を全うする始末であります!」

そうだ、自分の任務は、ご主人様に尽くす事だけではない。何故、ご主人様が1人暮らしを決意するに至ったか、という事実を、調べなければならない義務がある。

ぎゅ、と拳を握りしめた。ほんの少し、手のひらに爪が食い込んで痛い。
ついでに言うと、胸が痛い。

「………そんな大義名分が、あっても、情けないものは情けないですね」


取り敢えず、ミッション、スタート。






ベンチに座りながら、小さな文庫本を手に持つ。これでグラウンドへと顔を向けながら、本を読んでいる、というシチュエーションは完璧。ざわざわと聞こえる木々の音に、一瞬ほわわん、としかけたけれど、自分は今それどころではないのです! と一回パシリと顔を叩く。

さてさて、作戦を考えてみた。ご主人様の事を知ることが、自分の今回の任務。だからこそ、自分は、今この場に侵入している(理由がなければこんな恥ずかしいこと絶対しません)。
そして今自分がしなければならない事。それはご主人様の情報を集める、ただそれだけのシンプルな事だった。

只今放課後の時間帯。ご主人様が何らかに部活に入っている事は分かっている。その部活へ、こっそりと調査しに行けば      ん?

(………何らか、の?)

何らかの、部活。

(あれ、あれれ? 何部か、自分、しっかり確認、して)

それはちょっと認めたくない事実だったり

(確認、して、して、して、…………してない?)



だ、ダメじゃないですかー!!

一瞬、自分のふがいなさにクラリとした頭の前に、わーわーと走り回るサッカー部員達。いいですね、あなた達は気楽で! それに比べて自分は、自分は!
(いやこれぞ自業自得な訳ですが)(っていうか、自分、何で気づかなかったの!?)

ああ、もうお家に帰ろうかしら、なんて逃げ道をふ、と思い浮かべる。
家に帰って、ご主人様に「ご主人様の部活は何ですか?」とでも訊いてみるのはどうだろう。
多分そしたら、「剣之助だ」と返事が返ってくるような気がする。ご主人様は未だにご主人様と呼ぶ事を認めてくれません。

………じゃ、なくて、ですね。

今、自分が家に帰るとする。すると、自分はまた一度、この場に来て、ご主人様の部活を確認しに行って、としなければならない訳で。
(……また、来なきゃなんないんですか?)

ちなみに今の自分には、任務放棄して逃亡、なんて考えはどっかに投げ捨てですよ。

じゃあ、家に帰らず、地道にここの生徒に、「橘剣之助の部活を教えて下さい」と、聞き込み。……ダメです、怪しい人満載です。じゃあ、地道に部活を回って行く。……ホントに地道過ぎます。

なんてこったい! なイメージでううん、と頭を抱えてると、手の中にあった文庫本が、バサリと地面に落ちてしまった。(あ! これ楓さんの本棚から適当に取ってきたヤツなのに!)

これからどうしましょうか、とベンチの中で小さく体育座り。
本当に、泣きたい気分です。


丁度、その時。

遠くから、「あぶない!」と叫ぶ声が聞こえた。一体どうしたんだろう。と考えるので0.1秒。自分に向けての言葉だと知るのに、また0.1秒。そして、それで何が危ないだと知るのにまた      


頭のてっぺん辺りにグリグリっと衝撃がきて、自分の体がベンチにべったりとついてしまった。え? なんですか、コレ。あ、なんか痛い。うっすら視界の端に見える、白と黒の丸い何か。え? オニギリ?


くらくらする頭の中で、声が聞こえた。「    大丈夫!?」あらら、何処かで聞いた声だな、と考えて、その声の主へと目を向けた。

赤とオレンジの中間地点な髪の色。すらりとした体。……なんだか無駄に寒気を呼ぶ、その表情は     え? どういう事ですか?


華原、えーと、下の名前、なんだっけ?

………知り合いらしきもの、発見。
(っていうか、頭がズキズキ痛いです)(え? サッカーボール?)



  


2007.05.04