「マネージャータオル!」
はいはいはい
「マネージャータイム測って!」
はいはいはい
「マネージャー救急箱!」
はいはいはいはいはい!!!
……あれ、自分は、何をしているんでしょう。
第26話 どうぞバカとおいいください
「何サボってるの?」
後ろからふいにかけられた声に、「ひえっ!」と返事をしてしまった。その反応に、その人は満足したらしく、クククッ、と小さく笑う。「そんなにびっくりしなくてもいいのに」……いやいやいや、だったら普通に話しかけてください、と思って(とても口には出せません)ただいまの現況の原因 華原、雅紀
爽やかオーラをまき散らしながら、にこにこと微笑んでいるけれども、その微妙にはっついたような顔が、今でも背筋を寒くさせる(や、最初会ったときよりかは、随分マシになりましたけど)
「あの、自分はいったい何をしているんでしょう」
「ん? 決まってるじゃん」
「はぁ」
「パシリ」
「…………あああああ!(泣きそう!)」
力の限りため息を吐いていると、ククッとまた笑われた。ぐいっと引っ張られて、耳元に、華原さんの息がかかる。(ちょ、ホントやめてくださ…っ)
「サボっちゃ、だめだよ」
「ひゃああぁあう!(耳に、耳に息が!) や、やめてください華原さ、」
ふ、とまた息をかけられて、「可愛く雅紀っていってみな?」「ひいいい!」…アホですかアンタは! ああもう、いい加減、いい加減自分は…っ!
「きゅ、休憩を要求します…っ!」と、思いっきり叫んでいました。
□□□
キャーキャー、と聞こえる声。いや、もう高音の周囲に害をもたらす音波と考えてもいいかもしれません。いい加減、華原さんが(このごろ雅紀といえとうっとうしいです)、部活でシュートをきめる度に聞こえてくる音(声)で、慣れないのか、と訊かれても、慣れないものは、慣れない。無理です!
はぁ、と小さく自分はため息を落として、目の前の建物をじっくりと見てみた。
茶色い板で出来た外装に、くるりと丸い天井。入り口にはところ狭しと殺到した女の子達に、思わずジリジリと後ずさり(ダメです、こんな事でどうするのですか!)
自分は、何も華原さんに、延々とパシリをさせられていた訳では、ない(いや多少そんな面もあったかもしれませんけど!)
時々聞こえる女の子の会話に耳を澄ませつつ、ご主人様の荷物&言動をさりげなくチェックしたり。
そして、そしてついに突き止めたこの事実!
学園、NO.5!
(いえ実際の話、女の子達に呼び出され、入会しろと脅されたんですけど)(もちろん丁重にお断りさせて頂きました)
なんと、その中にご主人様が入っているとか! しかも、バスケ部だとか!
凄いご主人様! 流石ですご主人様! お赤飯を炊きたくなるくらい、感動しました! (敢えていうべきポイントがあるとしたら、なぜご主人様が一番ではないのでしょうか)
ぐぐっ、と拳を作って、天に掲げつつ、叫んでみる。……あれ、自分なんか目的ずれてる?
まぁ、とにかく、潜入捜査の第一歩として、このダンダンダンッ! とボールをつく音がする、この場所へと乗り込んだ始末なのですが。
「キャー! すてきー、橘くぅーん!」
「ああまたボールを奪ったわ!」
「ちょっと邪魔よ見えない!」
(………いやホントどうしよう。この人たち超怖い)
こんなところで、ご主人様が、一人暮らしをしたいっていった秘密があるものなのか。……ない。きっとない。っていうかなかったらいいな! なんちゃって!
右。左。もう一回、右。
きょろきょろきょろ、と視線を動かして、パタパタはね回る女の子を見てみる。
ううう、と抱えた頭が、とっても、痛い、です(く…っ、楓さんが、こんな制服なんて持ってこなかったら!)
くううう、と一回うなって、首を何度か傾げてみて、どうしたもんでしょう。と考えてみた。ああ、うん、そうですね。
(……華原さんが怖いので、戻ります) いえ決して、逃げて、逃げてなど…っ! や、何に言い訳をいう訳でもないのですが。
かっこん、と力なく倒れた首。うう、役立たずでごめんなさい、ローランさん(うあ、今、頭の中で高笑いしてるローランさんが、)
ふふん、後でお刺身にしてさばく如く、しっかり調査しちゃいますから覚悟しといてくださいよべーだ! の、勢いで、くるん、と回れ、右。
そのままグラウンドに駆け出そうとした、丁度、その時に、ちらりと影が見えた。
白い白衣に、お耳にヘッドフォン。ついでにくわえタバコまでしちゃってる、どっかで見た事のある、校医さん。
(うわわわわ、や、ヤバッ)
こないだあの校医さんから逃げちゃったんですよね! 名前とクラス聞いてきたんですもん!
こ、こっちを振り向かないでくださいよ、そのままあっちに行ってくださいよ! と密かなテレパシーを送ってたってのに、妙な勘を働かせたのか、「ん?」と首を傾げて、まっすぐにこっちへと向かう、校医さん。ちょ、ちょっと待ってください逆受信?(テレパシーが仇になった!)
「ひいい!」とかいいながら(…このごろ自分ってよく叫んでません?)思いっきり全力疾走。 女の子達がキャーキャーいってる後ろを通り抜けて(がんばれ自分!)、体育館裏へとダッシュ!(呼び出しのお決り場所です!)
そのまま体育館の端っこにへばりついて、後ろを確認。よし、誰もいませんね?
「あ」
意外なところからかけられた声に、思わず自分も「え」
ジャー、と流れるお水の音に、あ、もしかしなくともここって、手洗い場だったりしたんでしょうか。幸いな事に、一人の、銀髪のきらりとした、髪を持つその人は、………その人、は?
「……お、お前」
「へ、あ、あの」
「な、なんでここに、つか、その格好、」
ごごごごごごごごご主人様ーーーーーーーー!!!!!?????
(お、落ち着け自分落ち着け落ち着け落ち着けこれが落ち着いていられるか!)(つか何でここにいるんですかさっきまで橘くーん☆とかいわれてたのにああそうか疲れたからお水を飲みに来たんですね)(あ、あれ、ご主人様にとっては自分は男な訳であって今の格好はひらひらのまごうことなきスカートでありそれは女の子がはくものであってつまり何が言いたいかというと今この状況で自分が思われている事は)
女 装 趣 味 … ? (しかもご主人様のストーカー気味)
じゃーと流れる水の音に、一瞬遠くなりかけた意識を引き戻されました。っていうかダメでしょ、それだけは、ダメでしょ!
パクパクと自分が口を動かしている間に、ご主人様の口が、しっかりと、「」、といおうとして、ダメですそれだけはいわせちゃダメなんです!
「おまえ、」
「わ、私、の双子の妹で、っていいます!!」
じゃー、と流れる、水の音。
………あれ、自分、今何いったんですか。

2007.08.03
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