じー
「………」
じー、じー
「あの……なんか用ですか、ご主人様」
じー、じー、じー


第27話  若様だって悩むのさ




「あのーご主人様、大丈夫ですか?」と、ちょこん、と目の前に座って、上目遣いにコッチを見てくる男がいる(いや、少年っていった方が正しいかもしれない)
さらりとした銀色の髪に、透き通るような白い肌。……こいつホントに男か。いや、問題は、そうじゃなく、

(今日俺は、一人の女に、会った)
銀の髪で、ざんばらに切られたコイツの髪と違って、腰まである真っ直ぐで、綺麗に切りそろえられた、真っ黒な髪の女。
きょろりとこっちを見る瞳の色は同じで、背丈も、肉付きも、声も、仕草も、全てが同じ。敢えて違う点を上げるとしたら、名前が違う。

『わ、私、の双子の妹で、っていいます!』

(妹、か)
当たり前だ。あんな格好で、あんな場所にいて、あんな言葉をいう。双子の妹だなんて言い訳、本当の事でないかぎり、今時小学生でも使わない嘘だ(つまり、ホントなんだろ)
あの後、『、私のこと嫌いなんで、私がここに居たっていわないでくださいね!』といった後に、逃げ去った、彼女。

(何で、俺は、あの女のことを、コイツだなんて思ったんだ)
見た瞬間、ピンッ、と脳内で何かがいった。
(なんなんだ俺、なんで男のことを思い出したんだ)

ふい、とあのと名乗る女のことについて考えてみた。
くるくると回る表情と、ほっそりとした体。多分、町中で歩けば、ちょっとぐらいの視線を集められるんじゃないだろうか。
(ちょっと待て、反対をいえば、それにそっくりなコイツも、同じぐらい、可愛いって事じゃないのか)

「あの、ご主人様?」
「ん?」
「大丈夫ですか、ホント」
「…ああ」

全然大丈夫じゃねぇよ。寧ろ脳みそが腐りそうだ。
一瞬。一瞬でも、コイツの制服姿なんて考えた、俺の脳みそが、嫌だ。最悪だ。変態だ。

(………変態、だ)

そしてもう一度、考えた制服を脳裏に思い起こして、可愛いんじゃねぇの、と、ひっそりと思った自分が嫌だ。


「…あのーご主人様ー」
「………ご主人様じゃない、剣之助だ(俺は、変態じゃ、ない)」

ようは全て、コイツが女顔なのが悪いんだ。
そう思って、今日は早めに寝る事にした。



  


2007.08.04