お買い物袋を片手に、ふらふらしている最中に「あ」
第30話 遭遇
片手に持つ、スーパーの袋が、ほんの少し重かったけれど、特に苦になる程でもなかったので悠々と進む。もう慣れてしまったマンションへの道を、頭の中でするすると思い描いて、「ほんの少し、寄り道とか、」 だめですかね?
そんな事を、珍しく思ってしまった所為で、自分は、いつもと違う道を一本ずらして、のそのそのそ(ほんの少し、帰り道を変えてみましょう!)
近いはずなのに、何度かしか通った事のないそこは、ちょっとワクワク、してしまうのは自分だけなのでしょうか。
「あ、このお店」
一度、立ち寄った事のある、どこか独特の空気を持つお店の前で、ちらりと中を見てみると、この前見たときと、全く変わらず、茶色い紙袋を顔のばさっとかぶって(もちろん目の部分は穴が開いていますが!) ブカブカの服のお手々には、なにやらピコピコ動くお人形「………相変わらず」 相変わらず、入るのに勇気がいりますねコレは。
「か、帰りましょう」
扉の間からこっそりのぞいていた体をもとに戻して、ぐるん! 「うわ」「うひゃっ」
ぼすん、と誰かのお腹あたりに激突して、「す、すみません…」 スーパーの袋から一瞬中身が飛び出しそうになってビックリしたけれど、ぶつかった人が、ギリギリセーフで受け止めていてくれたらしい。今度はごめんなさいの代わりに、ありがとうございます、と顔を上げると、見知った茶色い髪の毛の男の人だった。
「うあ、鷹士さん」
「大丈夫か、」
にこっとした微笑みが、ちょっと格好いいなあ、とおもった後に、顔をぶんぶんぶん!(ご主人様の方が、格好いいんです!) 鷹士さんがどうしたんだろう、とした顔をしたので、こちらもにかっと笑って誤魔化させてもらいました。
「、ここの店に何か用事でもあったのか?」
「へ、いえ、恥ずかしい話、自分はここが何の店なのかという事も知らないんです」
「そうなのか?」
「はい」
鷹士さんは、ふうん、と首を横にして「ここはな」 どんな店なのか、そのことは、実はちょっと自分は気になってもいたので、思わずスーパーの袋を顔もとにつきだして、「ふんふん」
「ここは、マシン屋、エリザベスだ」
「…………ましん?」
というか、えりざべす?
そうそう、わかったか? といってにっこり笑う鷹士さんには悪いけれども、どうにも概要が掴めそうにない。一体、なんのマシンを売っているんでしょうか、と聞こうとして、実は機械全般が苦手な自分には、あんまり関係ないですかね、と一人で納得。
「案外おもしろいんだけど、も見てみないか?」
「え、えと、お買い物の帰りですんで、自分はちょっと」
「そうか、残念だ」
せっかく、にも意見を聞こうと思ったのに なんて言葉が聞こえてきて、意見? しょんぼりを可愛らしく肩を落とす鷹士さんに、なんの事だろう、と一つ。「うん、ヒトミがな、ダイエットを始めたんだ。だから俺も、何かプレゼントしようかと思って」
……それは、マシン屋で、ダイエット用品をプレゼント、って事なのでしょうか?(……それは、随分思い切ったプレゼントですね)
失礼ながら、ヒトミさんの事を思い出して見た。ぷっくりとした体型に、ご主人様曰く、「すげぇ」
一応。ものすごく一応ながらも、同じ女として、体型に気を使う、というのは分からないでも、ないかも、しれない。だから、私もヒトミさんに何か協力したいな、とか思ってしまうのは、迷惑なのでしょうか。
肩から掛けた、小さなバッグが、カサリと音を立てた。「あ」ちー、とチャックを開けて、中に入ったチケットを、取り出す。(そういえば、少し前、ゲーム屋さんでただで貰った、)
「鷹士さん、これ、ヒトミさんにどうぞって、」
随分鷹士さんの方が身長が高くて手を伸ばすのに苦労しましたが、すいっと向けた手のひらを、鷹士さんが、ぎょっと大きな目を開けてこっちをみる。「プールの、チケット?」「はい、どうせ自分は使いませんし」
うるり、と感慨深いような顔をした鷹士さんは、がしっと、私の両腰を持って、
「ー! お前はほんっとうにいいヤツだな! ヒトミの事を気に掛けてくれるヤツは、俺もう全員だいすきだ、大好きだ、いや元々大好きだがな!」
「ちょ、た、鷹士さ、くるし、」
「お前になら、ヒトミを嫁にやってもいいかもしれない!」
「いや、それ、色々と、無理が、」
「それで俺たち一緒に暮らそう、ヒトミと俺と! うわああ、幸せだー!」
「た、たか」
「今日からお前は、桜川だぞー!」
「ひ、人の話を、き、聞いてくださいー!」
そんな風に、桜川家に引きずるように連れ去られた自分は、自分の帰りが遅いと心配をして部屋の前へと仁王立ちしていたご主人様に助けられる事になったのでした。

2007.01.31
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