お人好しの島





ざくり、ざくり。真っ茶色な土がほじくり出される光景は中々の見物である。
例えそれがムッキムキでも、きらりと汗が光れば、何でも格好良く見えるのではなだろうか。多分。なんとなく。そんな感じ
「お前らもっと腰を入れんかーい!」「ヘイッ船長ォぉお!」とか元気よく聞こえる声に、もういいよ、そんなトコでチームワーク発揮しなくていいよ、とふっと口元で突っ込んだ。

一人寂しく体育座りをしながら、じぃっとジャキーニたちを観察する。木陰の中にいるとはいえ、ぼたぼたと汗が溢れる。暑い。



『自分で食べちゃった分は、自分でなんとかしましょう』




あの日、アティさんがちょいっと人差し指を立てながら提案した言葉に、なるほどなぁ、と頷いた。随分平和的な解決になったものだなぁ、と苦笑してしまう。ジャキーニ達のごつごつした手が握る小さなスコップは、なんだか冗談みたいでぶふっと笑える。彼らは至って真面目なので、笑ってはいけないが。


「もっとじゃぁー!! もっと力を入れるんじゃぁーーー!!!」
「「「「「ヘイッ船長!」」」」」

ところで、思うのだか。
あのアティさん、先生さんの言葉は盗んだ分を作り直せという意味なのであって、新しく土地を開拓しろという意味ではないと思うのだけれどもどうだろう。
それでも彼らは意気揚々とどっからかマイスコップ(!)を取り出して、振り回している始末。これで水をさすのもどうかもしれないし、なんだかんだと言って、きっと陸が恋しかったんだろうなぁ、と私一人心の中でで決着を付けてみた。


「おう、! お前も手伝わんか」
「結構です。暑いですから」


アイパッチは、そんな非協力的な私をじろりと一介した後、ケッ! と言いながらそっぽを向く。というか私は別に彼らの手伝いをする訳でここにいる訳ではないのだ。では何故ここにいるのか    
それはあの、白黒ふさふさな男性のお言葉からなのだ。


    おう、 、知り合いなんだろ? せっかくだし、あいつらの見張りをしといてくれや。あとで礼はするからよ。


あの小さな妖精(名前はマルルゥというらしい)、彼女の一声で難なく誤解もとけ、多少疑り深い目をしていた忍者の方も納得してくれたらしく、ヤッファさんは頭をひっかいて、「すまねぇなぁ」と謝ってくれた。
疑わしい行動をしていた自分にも非があると思うので、そこらへんは全然構わないのだが、それにしもなぁ、とため息をついてしまう。

(もっと、殺伐としたものになると思ってたのに)
目の前でキラキラ汗を飛び散らせながらスコップを振り回す海賊軍団を見ながら、はふう、とため息をついた。(そうだなあ、何も、シリアスになる必要なんて、どこにもないもんね……)
そういうのって、かっこいいなあ。とほっぺたをぷにぷにと引っ張る。見習いたい。


「畑じゃー! 耕すぞおおおお!!!」
「「「「ヘイッ船長ォぉお!」」」」




ただし君たちは、もうちょっとシリアスしてくれた方がいいんじゃないかね、とはふーっとため息をついて、何やら奇妙な火がついてしまったようだし、ヤッファさんに見張りは必要ないみたいですよ、と報告しようかなあ、ときらきら光る太陽を見上げてぽつりとぼやいたのだった。






そしてそんなこんなで、私がぼんやり平和を満喫しているけれども、もう一人の僕は一人シリアスに身を投げていたのだった。







      ぽちゃんっ




ぬっと伸びる手があった。それは彼の首を締め、こぽこぽと泡が口から漏れていく。
なるほど自分は死んでしまう。腹の底から恐怖に震えた。
そんなまさか。僕はずっと、生きて、死んでいたというのに。今更だ。
(……死にたくない)

ゆるゆると見開いた瞳の奥で、真っ黒な海の底から、ぽかりと赤い花が咲く。(……赤い……?)
手を伸ばした。
人差し指を、ちょいとひねった。


僕は、生きた。




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2006.07.21~2006.07.24執筆 52~53話
2011.08.18修正 29話