歩く 軽く風が吹くと、ソルの指先は消し飛んだ。すぐさまもとの形へと戻るが、それは明らかに不安定になっていた。パーカーを深くかぶり、今が冬でよかったとは何度もそう思った。夏ならば、こんな厚着をして出る事は出来ないし、あまりにも目立つ。 今の季節はとてもいいと何度も感謝した。 「ソル、トウヤは絶対見つけるぞ」 「おう」 返す返事は、同じ言葉だけれど、やはりどこか諦めが漂っている事は分かった。「あきらめるな」口から無理矢理出した声は、どこかかすれていて、まるで自分が一番諦めているかのような気分になる。は何度も頭を振り、ソルの手を引いた。「あきらめるな!」 人がたくさんいればいい。もしかしたら、そこにトウヤはいるかもしれない。いないかもしれないけれども。 ソルの手のひらをひっぱる力が、次第に強くなっても、彼は足を引きずりながらのんびりと歩く。スニーカーが足に合わないと文句をいう事もなくなった。 「見つかる」 「、そろそろ無理だ」 「見つかる!」 お前が、何故諦めるのかと。言葉にかえがたい気持ちをぐるぐると胸の内に抱え、手を引っ張る。汗でにじんだの手が、ぬるりとソルの手を落としそうになる。その度に消えたのではないかと振り返る。 「トウヤ!」 叫んだ。振り返るかもしれない。この中にいるトウヤが、振り返るかもしれない。ソルの手を掴んだまま、は叫んだ。驚いたように近くの人間が振り返ったが、その中にソルとが探し求める人物はいない。「トウヤ、いるか!」もう一度叫んだ声はざわめきの中に沈み込み、「、何やっているんだ」とソルが呟く声も聞こえない。 「だっているかもしれないじゃないか。お前は諦めちゃだめなんだよ、諦めるなよ、俺は諦めない、諦めないから」 「もういいよ」 「よくないよ、なんでお前来たんだ。俺はトウヤを探すお前に手を貸したんだよ、諦めたお前に用なんてないんだよ」 あっちに行けよ! 力一杯ソルの手のひらを投げつけ、肩で息をしながら、ぎっとソルを睨む。正直よく分からなかったのだ。ソルが諦めたのだから、もういいだろうと囁く声も耳に聞こえたが、自分自身が許さなかった。ソルはトウヤを見つけるのだ。頭の中でしっかりとできあがっていた構図がぐちゃぐちゃと誰かに崩された気分に、地団駄を踏み、泣きじゃくりたくなった。もちろんそんな事はする訳はないが。 ソルの体はやはり透ける。気づけば頬が通り抜け、パーカーの帽子の布部分まで透けていた。「、俺は別に諦めてる訳じゃない」「嘘だ」「嘘はつかない」 「もう一度、ここへ来る事は難しいけれど、多分、ずっと先の事になってしまうけれど」 かすれたような、声までもがところどころ消えてしまっている。けれどもの耳には、しっかりとした言葉に聞こえた。 「トウヤは、必ず見つけるから」 そしてソルは消えた。 1000のお題 【422 死にものぐるい】 BACK TOP NEXT 2008.08.12 |