赤いツンツンした髪の毛の少年が立っていた。



 ぐにょり



もくもくとのぼる煙に、はくしゅりとクシャミをひとつ。ああ来ちゃったよ目の前に出ちゃったよあーヤッテキタァ! と今更ながらに心臓をばくつかせ、ちっちゃいなぁ、とジロジロとその少年を見つめた。そのことに気付いたのか、鋭い閃光をへと向けながら、少年は無言のうちでヒュンヒュンと槍を振り回すわけなのだが、そんな殺気にが気づく訳もない。


少年とマグナの会話を聞きつつ、これでどうするんだろう、テストは終了かな? マグナ成功かな? とかうーんと腕を組みながら、一人遠巻きにその様子を見つめる。そもそも自分はなんの為にいるのだろうか。帰ってもいいだろうか。今ならこっそり帰ってもばれない気がする。たぶん。


壁際へと、一人こそこそと移動している最中のことだった。
何やらフリップが懐から取り出した石を、ぎゅうと握りしめ、短いその腕を、高く高く天井へと掲げた瞬間だ。

ぴかりと光ったヒカリは、先ほどの赤髪ツンツンの少年の登場に似ている気がしないでもない。けれども残念なことに、ぽにょぽにょとの目の前にてうごめくそれらは、意識があるのかどうか、少々不思議だ。ぐにょり。

「レベル1的モンスター………!」

レッツスライム。


のこっそりの叫びに誰が反応することもない。そもそもネタが通じない。
嫌な予感がしたのだ、ものすごく。スライムといえば、

「さぁマグナよ! お前の召喚した下僕と共に、これから始まる戦いに勝利せよ!」


そんなフリップの声を聞きながら、は考えたのだ。
(ああやっぱり、セオリーだよね!)





そんな訳で、現在は一人壁際へとペッタリ張り付きながらダラダラと嫌な汗を流していた。フリップはどこか恍惚とした表情でブヒョブヒョとマグナを見つめているし、ラウルへと助けてくださいヘルプミー! と視線を投げても、「がんばれ!」とでもいうように、ぐっと深くこぶしを握られながら、ちゃかちゃかと避難されてしまった。このバカヤロウ! とはちょっとぐらい叫んでもいいのかもしれない。


もしかしなくても思いっきり入れられているらしい戦力に、はちょっぴり涙しながら、戦闘開始直後に、「ほら、これ!」とマグナから渡されたダガーナイフを「ギャアアア!! 刃渡り15センチ以上―!!」 なんて叫んで投げ捨てるんじゃなかったなぁ、と本気で後悔している最中だ。握りしめたこぶしが震えます。


にょもにょもにょも、と妙な擬音と共にへと向かいくるスライムABCは、うっすらとした水色のゼリーが動く度に、こぽこぽと気泡が踊り、正直ものすごく微妙な気分になる。


一体全体、自分は何をしているのだろうか。マグナにつれてこられ、戦いなさいと宣告され、もっと平和的に解決できないものなのか、ペーパーテストでいいじゃんもうほんとに! と現代っ子代表は感じる。得意科目は跳び箱です。


(ど、どうしろってんだ)


見つめあうこと数十秒。じりじりと後退することも、これにて終了だ。襲ってやるぜヘイヘイと何かの言葉が聞こえてくる気がするが、すべてはきっと気のせいだ。そう思いたい。
彼らを挟んだ向こうには、見事に善戦なさるマグナ赤髪ツンツンに、なぜだか本気で泣けてきた。

「ゲシャアアアア!!!」

予想以上にアクティブな声を上げ、スライムがはねた。「ギャアアアア!!!」負けじと喉を振り絞り、顔を横へとそむけた瞬間、その隣を水色の、ねばねばした液体が通り過ぎた。みるなみるなみるな!

唱えたセリフはそのままに、ぐいっと一歩、足を踏み出す。
それ上を駆け抜けろ         なんて上手くいく訳もなく。



ぐにょり。


足の底に、見事に引っかかった何かの感触、それはいうなれば、昔作ったスーパーボールもどきを思い出した。理科の簡単な実験だ。スライムを作るつもりだったのだけれども、合成のりを入れすぎてしまったのか、なぜだか一人、とっても固く、人差し指を、ついとつっこめば、ぶじゅぶじゅとくずれちゃうような、そんな、


「〜〜〜〜〜!!!!!」

の靴の裏で。

「ちょ、ぎゃ、いや、ちょ、くっついてる!」

ぶちゅぶちゅぶちゅ!

思わず暴れた足の裏で、連続で。





ひゅんひゅんと華麗にやりを回す少年Aが、肩を震わせながら本気で泣いているらしいに向い、「お前もう邪魔だから本気すっこんでろよ」と眉をひそめながら呟いた。

見かけ年下に邪魔と言われました。




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2009/02/03

1000のお題 【1 登場が派手すぎます】