「その消えた先生の名前は、セクターさんっていうのか……」
すぐさま全員で宿屋に集まり、顔を突き合わせ事情を話し合い、アルバは苦く呟いた。ライやリシェル、ルシアンの恩師であり、街からの信用も厚い。長期の遠出をしているのではないか、という案も出たが、彼の性格からして、それは考えがたい内容であるというのが教え子達の提唱だ。
アルバはその彼を知らないもしかすると、街で見かけた程度はあるのかもしれないが、小さな宿場町とは言え、一つの街に住む住人たちの顔を、よそ者であるアルバが知る訳がない。
「先生は、僕達の事情を全部知ってたから……」
彼らの相談役であった、ということだろう。全員が鈍く眉をひそめた。争いに、巻き込まれた。そう考えるのが妥当だ。(嫌だな) 騎士になりたい。そう願う理由は、結局のところ、よくわからない。強くなりたい。あのひとのようになりたい。家族を守りたい。みんなを守りたい。
(漠然としてる)
そう思う反面で、腹の底では全てを理解している。結局、彼はただのお人好しなのかもしれなかった。誰かが傷つくところを見たくはない。(なにごともなければいいんだけど) 顔を知らぬ男に対して、彼はほとりと息をついた。しかしながら、集まる面々の顔は、そろって同じものばかりだ。
セクターの捜索にと宿屋の人間達は駆りだされたものの、結局、空振りするばかりであった。
薄い黒の髪の男で、足が悪く、年はすでに30を過ぎていると聞くが、実際のところはわからない。若くもあるし、話や仕草を見てみれば、もう少しばかり上なような気もする。生徒達から聞いた彼の特徴を頭の中に叩きこみ、アルバは街を回ったが、実際のところ、それは無駄な努力であったようだった。「セクターを見ていないか」その言葉ひとつで、街の人間達は、「ああ、セクター先生ね」と顔をほころばせ頷く。
それからすぐに首を振り、「見てないねえ、一体どうしてるんだろうねぇ」と返ってくるのは不安げな声だ。
誠実な、気のいい男であったのだろう。そうアルバは感じた。中には「あいつは自分を語りたがらないところがあったから」とどこか納得しているふうなふしの人間もいた。(よくわからないな) 落ち込んだルシアン達の顔に申し訳なさを感じながら、アルバは日課である剣の稽古をと、大剣を抱えた。
隣にはがいる。散歩をしたい、と彼女が街の外へ行き、とある争いに巻き込まれてからというものの、なるべくアルバは遠出の際にはを誘うようにしている。はじめこそ、彼女は困惑した顔をしていたものの、今ではぴくりと顔を上げて、ちょこりとアルバの隣に並ぶ。
もしかすると、迷惑をしているのだろうか。そう不安になり、確認をしたものの、はとにかく必死に首を横に振った。けれどもその真っ赤な顔とハの字眉毛は行動を否定しているような気がしたが、彼女自身がそう言うのなら、とアルバは彼女を誘い続けた。おせっかいかと言われてしまうかもしれないが、やっぱり女の子を一人にするのは心配だ。
「は、セクターさんを知っているの?」
彼女はぷるりと首を振った。柔らかい髪の毛が、ふわふわと揺れて、白い首筋が見える。「私も、この街に来て間もないですから」「そっかあ」 お決まりの公園で、アルバは剣を振った。は彼から少し離れて、すとんと地面に座り、空を見上げた。「でも」
正体不明の軍隊を追って、心の底ではアルバに会いたくて公園に来たときみたいだ、なんてが思ったことを、アルバは知らない。
「無事でいてくれれば、とおもいます」
「……うん」
この街の中に、彼はどこにもいない。それがライ達が出した結論だ。グラッドが言うように、遠出をしているのか、それとも。前者であるのならば構わない。後者であるのならば、竜の子を狙う敵達を待つ他、打つ手はない。こちらはあちらのアジトを把握すらしていないのだ。
「まだ、どこか探してない場所があればいいのですが……」
「ううん。おいら達ならともかく、ライやグラッドさんがわからない場所ってなるとなあ」
地元の人間達でさえも手を上げてしまったのだ。そうでない彼らが頭をひねらせたところで、たかが知れている。しょうがない、とアルバは剣を振った。とにかく、今は鍛錬に励もう。それが自分にできる精一杯だ。ぶんっ、と重たく風が震える。(大剣か……)
過去に、イオス副隊長に槍を教えてもらったことがある。お前はまだ、自分をわかっていない。とにかく多くの武器を手にし、可能性をさぐれ。その言葉とともに彼の保護者的な存在であるレイドから大剣を、イオスから槍を、ルヴァイドから斧の手ほどきを受けたものの、ライ達の力になると決めたはいいが、さすがに一人きりの訓練では、向上の見込みが甘い。
(ライ達と、手合わせさせてもらおうかな)
グラッドであるのならば、中途で教えこまれたままの槍の技術を、どうにか形にしてくれるだろうか、と考えこんでみたものの、さすがに頼みづらい。半分、ただの宿屋手伝いのようになってしまっている自分と違って、彼らには仕事がある。(誰か、槍を使える人がいればいいんだけどな……) 剣を地面に突き刺し、ぼんやりとアルバは瞳を下ろした。
「……アルバさん?」
「あ、ごめん、」
ないものねだりをしたところで仕方がない。不思議気にこちらを見ていたに、手のひらを振った。気づくと、顎から汗が滴り落ちていた。ひどく長い時間、夢中に剣を振り回していたに違いない。「ホントにごめん、おいらが誘ったのに、こんなの暇だよな」 せめて街の外へ行けたらいいのだが、今はなるべく宿屋から離れたくはない。
ぶるぶる、とは座り込んだまま、慌てて首を振った。
「そんなことないです! すごく楽しいです!」
「楽しい?」
剣を振っているのを見ているだけなのに?
あっ、とは上げた両手を折り曲げて、肩を小さくさせた。「ごめんなさい、今、ライさん達の先生が大変なのに、楽しいなんて」「いや」 そうじゃなくて、と声をかけたいのに、なんとなくそれ以上言葉を重ねるのが難しかった。ううん、と彼女を見下ろしているとき、ふとアルバは瞬いた。「可愛いね」「え?」
瞳をぱちくりさせるの前に座り込んで、ちょんちょん、と彼女の前髪をわける髪留めを指さした。メイトルパの色だ。「似合ってる」 別に、特に理由なんてなかった。本当にそう思ったから言ったたけだ。そうなのに、はピタリとアルバの前でときをとめた。それから、ぶわっと沸騰したヤカンみたいに首元まで顔を真っ赤にさせて、ぱたんと後ろに倒れるようにバランスを崩した。「ひひゃっ!」「?」
びっくりしたみたいに彼女は悲鳴をあげて、体を丸めた。
大丈夫? と手のひらを伸ばそうとすると、はぶんぶんと首を振った。「あの、その」 近付かないでほしいとばかりに両手を振るを見て、アルバはひどく首をかしげた。小さなころは、可愛いという言葉を使うことには少し抵抗があった。どうよ、可愛いでしょ、リプレママが作ってくれたの、とおニューの服のサスペンダーをちょいとひっぱる、姉のような、妹のような少女の言葉に、ふんっとバカバカしく鼻を上げた。どこがだい、と返事をすると殴られた。小さなころは、フィズの拳はなんでこんなに硬いんだろうと不思議だった。
女の子が可愛いときには、ちゃんと可愛いっていえるのがイイオトコってやつなのよ、あんたも騎士になりたいんだったら、それくらいわかりなさいよね、と大人ぶって語るフィズの後ろには、こくりこくり、とときどき小さく頷く、クマのぬいぐるみを抱きかかえた少女もいた。なんだかよくわからない、と口元をへの字にしたら、母代わりの女性が、くすくすと楽しげに笑って、赤い三つ編みを揺らしていた。
あの人にも笑われた。騎士になるには、そんなのもできなきゃなんねえの? とむっつり顔で問いかけると、どうだろうねえ、と黒髪を揺らして、少年は笑った。
アルバが可愛いと思うときに、素直に言えばいいんだよ。
ときには出し惜しみも必要かもしれないけど、とちょんと彼が口元に指を置いて言った台詞の意味は、未だに少しよくわからない。でも、最初の言葉の意味は、背が高くなるにつれ少しずつ分かった。それだけなのだ。
なのには心底困った顔をして、可愛らしい顔をくしゃくしゃにさせながら体を小さく丸めた。「ごめん、おいら、変なこと言ったかな」
少し、このところ自身は彼女に馴れ馴れしいかもしれない。別にいい、大丈夫。そう彼女が言うから甘えているかもしれないのだ。顔を上げると、は半分泣いていた。ギクリとした。
彼女の頭を撫でようとして、それでこのあいだ失敗失敗?のようなことをしてしまったことを思い出して、中途半端に伸ばした右手を慌てて服の後ろに回した。そもそも、汗だらけの手であったことを思い出して、右眉をへたつかせて、なぜか周りを確認して、またを見下ろした。
「あの、う、えう」
言葉になっていない。せっかく綺麗にとまっていた髪留めを、はくしゃりと片手でぬぐった。どきりと胸が嫌な音をした。「ごめん、その」 もう一度声を出した。はぶんぶんと首を振った。「ち、ちが」 大切なものを抱きしめるみたいに、はぺとりと地面に座って丸まった。落ちた前髪が、彼女の顔を隠していた。
「う、うれしくて」
「……ん?」
言葉がちょっとつながらない。「?」と彼女の顔を窺おうとすると、は両目に涙をためたまま、悲しげと、苦しげと、さみしげと、全部を合わせたような、りんごのような顔のまま、アルバを見上げた。「わ、わかんないんです。私、可愛いって、よく言われるんですが、それは別にいいんですが、あ、アルバさんに言われたら、よくわからなくなって、すごく、いちばん、嬉しくって」
なんでなんでしょうか、とまた小さくは呟いた。
嬉しい、というのに、は苦しげな顔をする。全然表情と言葉が合っていない。そんなの変だ、と思うのに、気づけばアルバも彼女と同じように、自身の顔が真っ赤になっていることに気づいた。ハッとは顔を上げた。「ご、ごめんなさい、変なことを言いました」「う、うん」
変でした、とペチペチは両頬を叩いた。それからちょっとだけ困ったみたいに笑った。そんな彼女を見て、なぜだろうか。
もう一度、同じ言葉をとつぶやいてしまいたくなった。
***
きっと、自分はアルバにそう言って欲しかったんだ。褒めて欲しかったのだ。子どもみたいだ、と少しだけしょげたような気持ちになった。どうかしている。そう思うのに、やっぱり嬉しい、という気持ちがふわふわして、アルバの近くにいたかった。けれどもそうすることで、自身の目的から外れすぎることを恐れた。あくまでも、自身が彼の近くにいることは、あの召喚獣だらけの宿屋という不思議な拠点を調査するためであり、今はその調査対象もはっきりしている。
一人気まずい気持ちになって、アルバとは帰宅した。なぜだかアルバの口数も少ないことがありがたかった。お互い、何かを考え込んでいるようだった。頭の上にある太陽は、いつの間にやら頂点を過ぎていた。宿屋に異変はない。未だセクターの情報もつかめていないようだ、とベッドの上で転がる彼から“声”をきいた。
おいら達ならともかく、ライやグラッドさんがわからない場所ってなるとなあ
先ほどのアルバの言葉だ。
もし未だに彼が街の中にいるのならば、ライ達がとっくに見つけ出しているにきまっている。「……あ」 一つあった。「アルバさん!」「……うん?」 アルバにしては、少し返答が遅かった。彼はちらりとを見た。わずかに耳が赤い。「もしかしたらですけど、ライさん達がまだ探していない場所が思いつきました」 サッと彼は瞳を見開き、真剣な顔つきでに問いかけた。
「どこだい? ライ達に知らせなきゃ」
「駄目です」
は勢い良くアルバの手を掴んだ。ぎくりと体を強張らせる彼を気にすることなく、足速に歩く。ためらっている場合ではない。「もしかしたら、ただ勘違いかもしれませんし、少し、ライさん達には、とくにグラッドさんには言いづらいんです」「そりゃいったい……」「行けばわかります!」
わ、わかった! とアルバは頷いた。そうして、二人で駆けた。真っ赤な夕日の中を駆け抜けた。
***
ついてみると、アルバは少し拍子ぬけたような顔をしていた。当たり前だ。ごくなんてことのない風景で、もしかすると、彼は何度か通ったことがあるのかもしれない。青い屋根が可愛らしく積み重なった、三角の小さな家だ。積み重なった石の塀は、冷ややかなのに、どこか暖かで、まるで持ち主の性格が現れているようだった。
「……セクターさんの、家……?」
「知っていましたか」
「う、うん、ライから聞いたんだよ」
でも、と彼は少し困ったように眉をひそめた。ただの家が、どうして彼らに言いづらいのか。そんな顔をしている。「問題はここからです」「……問題?」 よくわからない。けれども、その前に一つ、また別の問題がある。「」「はい?」「手が」「……手? ……ひゃあっ!」 未だに彼の手のひらを掴んだままだった。
「ご、ごめんなさい」とはぎゅっと体を縮めて慌てて言葉を落とした。「うん……」 アルバは目線を逸らしながら、先ほどまで彼女と握りしめていた自身の手のひらを、そっと人差し指と親指でこすった。
「と、とにかく、アルバさん、中です」
「う、うん」
こくこく、とアルバは頷く。はソッと木の門に手をかけ、庭に入り込んだ。私塾としても解放しているらしい。耳をすませば、楽しげな子どもの声が聞こえてくるような気がする。はそっと腰を落とし、地面に手のひらをついた。「……何をしているんだい?」「いえ、セクターさんがいなくなってから、そう日にちは経っていません。その間に雨が降ることはありませんでしたから……」
少ししめった茶色い土に指をそえる。小さな子どもの足あとが多い。生徒のものだろう。その他にも、いくつか大人の足あともあったが、これはグラッド達である可能性が高い。セクターは、足を悪くしていた。彼らの足あとは、それにしては少し“元気”すぎた。
「これかな……」
グラッドとも、ライとも、ミントのような女性の靴底ではない。不自然に歪んだそのあとを確認し、時間をはかる。これは少し、古いものかもしれない。「……え?」「どうかした?」「いえ、その」 気のせいかもしれない。けれども見過ごせない。ソッとは、そのあとに指をのせ、なぞった。「重すぎるんです」
そうだ、それだ。
ライから、彼の背丈や、体格についてはある程度聞き及んでいる。だというのに、彼の足あとは、平均男性のそれをゆうにこえ、深く落ち込み、土を固めていた。「……なにか、重いものを持っていた、とか?」「そうかも、しれません……」 それにしては少し違和感が残るが、可能性はある。「武器を、持っていたのかも」
古傷で、足の悪い男性が? 自身で言葉を発しながら首をかしげた。アルバも眉をひねっていた。とて、諜報が得意というわけでもない。軍にはそれ専用の部隊があり、彼女のそれはただの付け焼刃だ。「はこれを調べたかったのかい?」「いえ、それもありますが」 大まかには違う。これだけならば、グラッドに顔を合わせづらい問題はない。
「……アルバさん、今からすることは、誰にも言わないでくださいね」
神妙な彼女の声に、アルバはこくりと唾を飲んだ。そうして、わずかに迷ったあと、こくりと頷いた。とにかく、彼を信じよう。こんな使い方があるとわかっては、“少々問題すぎる行為”を彼女は行おうとしているのだ。
ポーチの中から、エメラルド色の召喚獣を取り出す。短い言葉とともに、ぽきゅんと飛び出したのは、石と同じ色をした、まるでゼリーのような召喚獣だ。スライムポット。とろけた顔をした壺から顔を出して、体の動きで、こつこつと壺を揺らしている。ぷきゅぷきゅ、とを見上げようと、精一杯に体を伸ばしている姿に、彼女はくすりと笑った。
「少し、悪いことをお願いしてもいいかな?」
こきゅぽきゅ? とゼリーの体の中で、ぽこぽこと泡を吹き出して返事をする。「あのね」 はひょい、と壺を持ち上げ、ドアの鍵穴に彼を近づけた。「開けることができる?」 ぽこぽこ、と返事代わりの泡と一緒ににゅるりと彼は小さく体を滑りこませる。アルバは思わず瞳を丸めた。かちん、と鉄の音が開くのは一瞬だ。ありがとう、とは彼にお礼を言って、石の中に戻ってもらった。ノブに手をかけると、きいい、と軽い手応えでドアが開く。
「……それは……」 は笑った。「はい」 そうして、アルバを振り返った。「不法侵入ってやつです」
***
「街の中で探していない場所と言えば、もうここしかないと思ったんです」
街はくまなくライ達が探した。街に住む多くの住人たちの目もある中で見つからない場所と言えば、そう限られている。「灯台下暗し、とシルターンでは言うそうですが、巡査役のグラッドさんの前でこんなことをするわけにはいきませんし……もしこの鍵開け方法が外道召喚師の方々に知られてしまったら、かなり困ったことになってしまいますから」
親衛隊の、それも一部の召喚術を得意とする人間たちの間にそっと伝わる秘伝である、と言えば少々大げさだが、スライムポットの体は、いつでもどこでも伸縮自在だ。この程度ならば、彼の弾力性を借りて鍵を開けることなどたやすいし、複雑な形であったとしても、型をとればあとは簡単だ。「あ、いえ、みなさんがそういうことをすると思っているわけでは、全然ないのですが!」 は慌てて首を振った。アルバはすぐに苦笑した。
「わかってるよ。それに誰にも言わない。召喚術も、あんまり得意じゃないからね。使う機会も一生なさそうだ」
にこりと二人で頬を緩めた。「……それにしても」 家の中を探れば、何か彼がいる場所のヒントがつかめるかもしれない。そうも考えたが、そう簡単に話は進まないようだ。生徒たちが使う小さな机に椅子、壁にある教科書、黒板。ありきたりの、けれども微笑ましい部屋を通り過ぎ、彼の私室への扉をノックした。そうしたあとで、意味のない行為だと気づいた。ドアノブを押そうとして、さすがに少しためらった。すると、の頭の上からかぶさるようにアルバが手を伸ばした。ぎい、とドアが開く。かぎ慣れない臭いがした。
これは、油の臭いだ。ガソリン、という言葉をは頭の奥底から思い出した。彼女の専門はメイトルパであるが、ある程度他の世界にも精通している。「ちょっと、物々しい部屋だね……」 アルバが顔を上げた。壁には、武器が並んでいた。ただの観賞用である。そう表現するには、どれも綺麗に研ぎ澄まされ、丁寧に手入れされたあとがある。足が満足に動かない男が持つには、少々違和感がある。
はすぐさま部屋の端につまれた箱の中身を覗き、顔をしかめた。「どれも、ロレイラルのものみたいだ」 銀色の光を放つその道具を見たアルバの感想に、はわずかに瞳を広げた。
「アルバさん、わかるんですか?」
「ああ、うん。知り合いにロレイラルの召喚師がいるから」
そいつが整備ってやつをするときに使うものに似てる、とこぼれた台詞を聞いた。はしばらくの間、それらを見つめた。「アルバさん、戻りましょう」 口から出た声は、どこか静かだった。「彼はどうやら、みなさんが言う、見かけどおりの人物というわけではなかったようです」
***
それとほぼ同時刻、ギコギコと機械音を鳴らす、じっとりと不思議な目をした少女が、ぷんぷんとライに頬をふくらませていた。
彼女は機械兵士である。「教授からの伝言を伝えてあげるわ!」 ケタケタと、嬉しげに笑った。「町はずれの砦の跡で、貴方たちと決着をつけたいってさ」
キャハハハハ、キャハハハハ!
ぱたぱたと桃色のツインテールが揺れている。「いい加減にしろよ」 瞳を釣り上げたライの言葉は、彼女には聞こえない。
キャハハハハ、キャハハハハ……
プラグの尻尾を揺らして、彼女は去っていく。
小さな少女は消えていく。
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2013/03/22