ぽふ、と二人で一緒にくっついた。



床の上に二人で一緒に座り込んで、ぎゅっと体を寄せた。ときとき、と心臓が不思議な音を立てている。シメオンが、ぐ、と唾を飲み込むみたいな音を立てた。それから私の体を、またぎゅっと抱き寄せた。シメオンの顎が、身動ぎするみたいに私の肩をなでた。きゅーっと胸が苦しくなって、思わずきゅっと瞳をつむった。とんとんとん、とやっぱり胸の中で静かな音が響いている。シメオン、と小さく呟いたとき、お互いハッと瞳を開けた。「うわ、うわわわ」「あわあわわわ!」

ごろごろと離れるみたいに転がって、真っ赤になった顔を両手で隠した。「だだだ、だめだよな!」「だだ、だめですよね!」

こういうのはまだはやいですよね! とお互いうんうん必死に頷いてしまった。ぼとん、と頭の上から、本が落っこちてくる。足元に散乱した現状をぼんやり見つめて、手のひらの代わりとばかりに本で隠した。「よし、直そう!」「はい!」

図書館って、ずいぶん高いところまで本棚があるんですねとぶつかってしまって、すっかり穴あきになった本棚を見上げた。あまりにも広すぎるものだから、まるで自分たちしかいないようで、不思議な気持ちだ。

「みたいだね」ぶっきらぼうな声を作って、照れたような顔をする彼を見つめて、私はひょいと本を抱えたまま、シメオンに近づいた。ぱちぱち、とお互い瞬きを繰り返す。ほんのちょっとだけ、唇を近づけた。けれどもすぐに、お互い、ふはー! と息を吐き出して床の上に縮こまった。はたはたとカーテンが揺れている。「は、はやいな!」「はやいです!」

というか、こんなところじゃしちゃいけない。
首元に揺れるネックレスにほんのちょっと指をはわせて、うー、と私は唸って頭を振った。どきどきする。
(シメオンと、一緒にいたいのに)
いつもこそりと隠れるように会っていた。デートをしませんか。そう問いかけたのは私だ。どこでもよかった。真っ赤な顔で、私の隣を歩く騎士様の手のひらを握って、一緒にいたかった。(キスも)本当はすごくしたい。けれどもだめだ。あからさまな場所に誘うのは恥ずかしいし、そもそもそんなところも知らない。シメオンの家になんて行けるわけもないし、私の家に来ませんか、なんてことはもっともっと、絶対言えない。

こつん、と鼻があたって失敗した、最初のキスを思い出した。
(難しいなあ)
ときとき、とまだまだ音を立てている心臓に耳を寄せて、瞳を落とした。ときときしてる。


   ***


(なにが、女の子は待っているだよ)
頼んでもいないのに、ふわふわ髪のあの少年は、シメオンに近づいて、ぽそぽそと耳打ちするようにささやいた。シメオン、どこか二人っきりの場所に行ってはいけませんか。そうがおずおず問いかけるものだから、つまりそれはこういう意味で、そういう意味で、ああいう意味なのだろうか、と唾を飲み込んで、そんなちょっと待ってくれ、と首元までがひどく赤面した。僕たちはちょっと、そういうのはまだ駄目だし、いやでもキスくらいなら、いやいやしかし。

一分なのか、二分なのか。どれくらいの時間が経ったかもわからないけれども、ぴくりと固まって考えている間に、「図書館とか、いいかもしれませんね」とほたほた真っ白に彼女が微笑んで付け足したものだから、変なふうに邪推した自分が恥ずかしくなった。
けれども、「それはないよ、女の子はまってるんだから」 シメオンには個人的にアドバイスをしたいからね、と慣れた顔でパチンとウィンクをするルーディーに、そうだろうか、とぐるぐるした。だからちょっとくらい、押したって大丈夫さ。君から誘ったって、いいに決まってる。


(…………む、むりだ、ルーディー)
頭の中がぐるぐるする。キスはやっぱりムリだった。けれども、ただの偶然であるけれど、ぎゅっと彼女を抱きしめることができた。本がごろごろ落ちてきたものだから、慌てて彼女を庇えば、気がついたら長く抱きしめてしまっていた。
柔らかかった、とわきわき、と両手を動かしてみる。甘いにおいがして、ふんわりしていた。(うう) 勝手に顔が緩んでいた。

散らばった本を、代わりとばかりに抱きしめて、彼女の隣でうなってしまった。(に触れたい) 考えた言葉に赤面した。僕は一体何を考えているか。



(シメオンと、もっと一緒にいたいけど、どうしよう)
(とりあえず、キスは一度くらい成功したいところだ)