むう。と部屋の中で、思わずため息をついた。

03



李。と書かれている差出人の真っ白い封筒。ちっと軽く舌打ちして、から、ぴりぴりとさきっちょを破って、中身を取り出す(……いやだー) 机の上に、トン、と手を置いて、はー、ともう一回ため息。よし落ち着け。落ち着くんだ。なんか妙な事を書いてたとしても、息をして、深呼吸して、落ち着いて! ご丁寧にも、日本語で書かれた文章に、目を通した。


この度金銭面での援助を      ぐしゃ

「………………きんせんめんでの、えんじょ?」

わーいやったーラッキー! じゃなく。「…………援助?」い、いまさら?(いや今だからこそなのかもだけど)「いまさら、?」ぐしゃぐしゃぐしゃ

思わず力が入って、面白い具合につぶれてしまった手紙に、「うわっ」 深呼吸深呼吸。
あーっと、机に突っ伏した。李家の事だ。絶対、絶対、裏がある。代わりに、なんて絶対何か要求してくる。
私はまだ子どもだけど、メリットデメリットを知らない訳じゃない。取りあえず、この怪しすぎる手紙から、何かぷんぷんきな臭いニオイが立ちこめてくる事ぐらい、まるわかり。「よし」がばっと、顔を上げた「こんなもん、ポイ!」 ぐしゃぐしゃ、パートスリー。


さようなら李家。私は一人で生きていく!
決意を胸に、ガラリと窓を開けて、ベランダへと手を掛けた。生暖かい風が、ぴしっと頬を打って、「あれ」くんくんくん。どこかでかいた、ニオイ。

ぴるるるるるるるる、ぴるるるるるるるる。

小さな鳥の鳴き声と共に、ニオイが、溢れた(桃矢先輩と、同じ?)「え」思わず、ベランダの手すりを掴む手に、ぎゅ、と力をいれて、小さく溢れる景色を、じっと見つめる。

ぴるるるるるるる………


妙な風が、びゅわっと吹き出した! 「ちょ、ちょいまち、タンマ!」 お隣さんの綺麗にガーデニングされた植木鉢が、宙を浮いて、がっしゃーん!「ひいっ」 浮く! ぎゅ、と手すりを、体ごと、くっつけて、目を瞑る、一歩手前。

大きな大きな鳥が、地面から、ぼろっちいアパートの側面すれすれを、駆け上って、ぴるるるる……
大きく、その鳥は飛び上がった。私の顔面ギリギリを、痛いくらいの風を、身にまとって、飛び上がった。

「…………と、とり?」


一瞬。一瞬、混じり合った視線の中で、その大きな鳥が、叫ぶように、(クロウ、カード)(私は、クロウカード)(誰か、持ち主を     


大きく、大きく、飛び上がった、鳥の後で、ぽつりと一粒、赤い何か(…血?)ぐしゃぐしゃになったお隣さん家の植木鉢は、取りあえずかわいそうに、と手を合わせておいた。


ほんの少し残るニオイに、くんくんと鼻を寄せる。このところ、街の中に立ちこめるニオイと、おなじだ。先輩の手のひらと、同じ。
手すりに抱きついたままの格好で、ううん、と考えた。
(……………クロウカードって、なんだっけ)(どっかで聞いた事、あるんだけどなー)


取りあえず李家よ。私は一人で生きていく!(言い直し!)