あの不思議鳥事件から数日。町中をぽてぽてと歩いていた。

04


今日は珍しく、お腹いっぱいご飯を食べた。お隣さんがどうですとごちそうに招待してくれたのだ。ありがたいと思う反面、ただめしは妙に良心がズキズキする。ならば私は、と先日かわいそうにも妙なでっかい鳥が飛び立った時、バシバシと破壊されたお隣さん宅のベランダの掃除を引き受けた。いえいえそんなと否定されたものの、寧ろこちらこそいえいえそんなといって、労働ゲット。まぁそんなこんなで、珍しく、私のお腹はふくれている(やったね)

今日はケーキ屋さんの定休日だ。特になんの予定もないその時間を、本来ならば空腹に耐えて部屋の端っこにいるはずだったけど、どうせ気力も体力も充実しているなら、道ばたの空き缶拾いでもして、市役所へとポケットティッシュを変換してもらおう、そうしよう。


「あ、さん!」

もしくはどこか適当に、ポケットティッシュを配っているお姉さんとかいないかなぁ、何回も通って貰うのに、と自分でも微妙に情けない事を考えつつ、コンクリートの地面を踏みしめていると、ほんの少し向こうに、ちょっとちっちゃめな影が見えた。聞こえた声に、はっとして、「さくらちゃん、久しぶり!」

たったった、とこっちに駆けてくる姿は、可愛らしい。ぴこぴこと揺れる、彼女の茶色い髪を見つめながらそう思った。「久しぶりですね!」「うん、久しぶり」
桃矢先輩の妹、桜ちゃん。小学校中学校高校と合同な我が校は、必然的に彼女ともお知り合いとなった。

ローラーブレードを足に、からからと隣を歩く姿は、うん、若いなぁ。

さんは、どこに行くんですか?」とにっこりと尋ねてくるさくらちゃんには悪いけど、「ポケットティッシュを集めに」なんていえない。うふふ、とにっこり笑った後に、ちょっと商店街にね。といっておいた。嘘じゃない、あそこら辺は、空き缶が多いのだ。「さくらちゃんは?」「私は家に帰るところです」

そうなんだ、といった後に、ぶるるっ、と妙な予感がした。頬に当たる風が、冷たい。どうやら私の顔は、相当厳しくなっていたらしい。隣でさくらちゃんが、どうしたんですか、と不安げに見つめてくる。「ごめんね、さくらちゃん」「え?」 ほんの少しの間をおいて、ぎゅ、と彼女を抱きしめた。「ほ、ほええええ! さん?」

びゅううう! 風が吹く。ぴるるるるる、と聞こえる音に、大きな鳥の姿が見えた。(私は、あの子に縁でもあるのかな)ぴるるるるる……くるくると螺旋に吹き惑う風の中で、私よりもほんの少し小さな彼女を、とばさないように、ぎゅ、と抱きしめる。ふ、と、ニオイがした。
桃矢先輩の手のひらから、ベランダの鳥から、町中に、時々、あふれた、ニオイ(………魔力の、ニオイ)
「クロウカード」と、ぼそりと呟いたさくらちゃんの声を聞いて、このところ、色々と妙な感覚は、この子が原因かもしれない、とふと思った。ぎゅ、と抱きしめると、また、魔力のニオイが、濃くなる。



ぴるるるるる………


聞こえる鳥の声に耳を澄ましながら、なにやら妙な事に巻き込まれているなぁ、さくらちゃん、頑張ってね。と心の中で、こっそり応援させてもらった(放置っぽくてごめんね)