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小狼を陰ながら補佐。その条件を思い出しながら、私はからころと桃矢先輩からもらった飴玉を口の中でふくらませた。
(その割には、色々とずさんなんだよな)
ポケットの中のいくつかの札を確認しながら、あくびを繰り返した。サポートをしろと言うのであれば、ある程度の情報は必要だ。けれども渡されたのは一枚の写真ばかり。ああ、“小狼って、こんな男の子だったんだな” そんな馬鹿みたいな認識を頭の中で転がして、こつこつとアパートへの道を歩いた。馬鹿馬鹿しい。
(サポートをしろって言うんなら、それに見合った情報がないと、話にならない)
彼がこちらに来る日時も場所さえも知らない。あとあと、改めての連絡があるかとおもいきや、いつまで経ってもポストに届く手紙はただのダイレクトメールで、焚き火のたしにもなりはしない。(これじゃあただの) タダ飯ぐらい。そんな言葉が思い浮かんだ。
李家からの仕送りは、規定通りの銀行に振り込まれている。粛々としたその行動に、どこか不安がよぎるものの、お金はあって損はない。そう思うことにしたい。食費を削って生きていく生活は、育ち盛りの女子中学生にとって、あまり奨励したいものではない。
そもそも、この中途半端な行動はなんだ。
一つ、理由を思い至った。けれどもすぐに首を振った。馬鹿馬鹿しい考えだ。
(あちらが、こちらに情報を渡さないようにしている)
そう考えたところが妥当だろう。私はあくまでも叩かれた石橋というところで、できるところなら、なるべく関わりあいになるな。そんな思考が透けて見える。
がり、と思わず飴玉をかんでしまった。「あちゃ」 しまった、と砕けた破片をなめて、ため息をついた。(まあ、小狼の場所は、クロウカードの気配でも追っていけばわかるでしょう)
カードの場所すらも認識できない程度なら、放っておいても構わない。そう思うが、どこか寂しい。
(まあ、なんとかなるでしょう)
タダ飯ぐらいにはならない程度に、と中途半端な覚悟をそえて、私はてくてくバイトから帰宅した。
***
「あれが小狼」
遠目で見た少年は、やっぱり小さな男の子だ。
解き放たれたクロウカードは、新たな主を探している。カードはさくらちゃんを選んだ。残念ながら、小狼ではない。補佐をしろ、と命じられてはいるが、さくらちゃんの邪魔をしろとまでは言われてはいない。少々へりくつかもしれないが、そもそも陰ながらとのことなら、ギリギリまで姿を見せないのが筋だろう。
「人を操るカードもあるんだ……」 おそらくさくらちゃんの友人であるだろう一般人の少女にカードが取り憑いたときは、さすがに肝が冷えた。
木の枝から飛び降りようとしたその瞬間、覚えのある姿が目に入った。あの目立つ銀髪は間違いない。月城さんだ。よくよく知り合いに会うものだな、と思ったのだけれども、狭い街の中だ。そうおかしいことではないのかもしれない。
月城さんが小狼の手をとったその瞬間、小狼はひどく赤面しながら逃げ出した。取り残されたさくらちゃんと月城さんは、二人頭の上にクエスチョンマークを載せていたのだが、私は激しく枝からずり落ちた。
なんというか、コメントに困った。