「………なんか、増幅してね? お前ら」


第6話   仲間に入れてせんぱーい!





ついこの間俺にヘッドロックを決めやがった金髪と、いつでもどこでもギロギロ俺を睨むクラスの女子が、なぜだか屋上にて楽しそうにお弁当箱を広げていた。何だろう、この疎外感。仲間に入れてください、ちょっとさみしい。


「そうなんです実は僕たち分裂して増幅できるんです」
「ぶちっぶちぶちっ!」
「とりあえず双子は黙れ」

ぐねぐねと体を動かしながら周りへと纏わりつく双子へと思いっきり蹴り上げてやろうと振り上げた足は、もっさー兄によりガシリとつかまれ、不安定な体勢のまま「たかーいたかーい」「やめ、ちょ、やめろこのボケ!」


ようやく解放された俺に向って、クラスの女子は「あんた達うるさいわよ」とじろりと俺を睨んだ。半分トラウマになりつつかる彼女の睨みに、「す、すみません」と尻すぼみに謝れば、もさもさ兄弟がウフフと口に手を当てながら「あらあらこの年で尻にしかれちゃってるんですわねホホホ」と腹の立つ言葉を呟く。「うるさいわー!」「あんたがうるさいのよ!」 がごん!


おんなのこ、こわい。


振り上げられた拳に痛む頭をぐらぐらとさせつつ、春さーん、とがばっと向かおうと広げられた手はそのままに、彼女に思いっきり首根っこを掴まれ激しく睨まれた。最上級の睨みだった。思わず時が止まったような感覚に、ちょ、ちょ、こわ、こわい、何この子。この子、こここ、こ、「要先輩、この子マジこわい!」 「おう頑張れ」 「どう頑張ればいんですか俺はー!」


ガッと掴んだ要先輩は俺の頬をぐいぐいと押しながら「離れろ!」と御無体な言葉。「嫌です先輩!」「熱いんだよ!」
そんな冷たい言葉にひゅるりとうちひしがれていると、まぁまぁ、ご飯にしましょうよ、とスマイル0円春の微笑みを提供してくれる春さんにふらふらと連れられて彼の隣へと居座ろうとしてしまった。けれども空しく、激しくガシリと彼女に蹴られ、見事に入った鳩尾にぶるぶると震えていると、金髪がゲラゲラと人を指差して笑い、「うるせぇこのサルが! 俺なんかしましたか! なんなんですか!」

「サルじゃねー!」
「なにをこの触覚め!」
「これは俺のアイデンティティーなの!」

このヤロバカヤロがぶり! もひもひもひ。

「ぬおおおおこのサル! 何勝手に人様のメロンパン食べてんだ吐きだぜ!」

金髪の襟元を思いっきり握りしめながらぶんぶんとふっても、何やらガツガツと口元を動かし止まらない。止まらない。止まらない。「くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ」「ムカつく効果音出してんじゃねー!」 ぶんぶんぶん!

「俺はですね、千鶴くんって立派なお名前があるんですよ、リピートアフターミー?」
「金髪サル今すぐ弁償しろ! 触覚抜くぞ!」
「何か増えてるアフターミー!」


千鶴くんですこんにちはー! と叫ぶサルをガゴリと地面へと投げつけ、見事にサルの歯型が残ったメロンパンを寂しく見つめながら、「要先輩このサルを何とかしてやってください」と半泣きで頼み込むと、先輩はメガネをくいくいとあげて

「うんそうだなぁ、まぁ所詮はサルだから餌付けしたと思ってだな、見逃してやれよ」
「はい先輩!」
「サルじゃねぇよ!」



なんなんだ。なんでこんなに増幅してるんだ。俺は要先輩と春さんでほのぼのウフウフとお昼を満喫したいだけなのに、双子に金髪に暴力少女。ほのぼのできるものもほのぼのできない。くそーっとサルをガシガシと足蹴にしつつ、とかじられたパンをくるりと反転させてお尻からもそもそとかじりついていると、ぽん、と双子弟が俺の肩を叩いた。


「まぁまぁキミタチ」
「…………なんだよ」
「子ザル同士、仲良くしなさいね」

親指グッ



そろそろ突っ込む気力もうせてきたので、力なくもひもひとメロンパンを食べた。おいしいなぁ。空が青いなぁ。「逃避は負けだよ」「うるせぇわ!」



  

2009.02.12