re/ject

「さあガイ、俺様からのプレゼントだぞっ!」


 手作りって響きがいい 


ぽーん、と手の中に渡された小さな包みを、ガイはじっくりと見つめた。可愛いリボンでラッピングされていて、何やら香ばしい匂いがする。にまにましているをちらりと見つめ、恐る恐るリボンを外してみた。出てきたのはクッキーだ。

ガイはハッと顔を驚かせた。にかっとは笑った。万遍の笑みだ。その笑みを見て、ガイはやはりそうか! と頷く。「なるほど毒見か!」「今の流れでなんでそうなる!?」


力の限り殴られ頭が90度の垂直になってしまった状態から、あれ? あれえ? とガイは首をかしげた。「だって……なんでって……そうだろう? が俺に何の意味もなくプレゼントだなんて天地がひっくり返ってもありえないだろうし。たとえスコアに詠まれたとしても信じないな」「お前なんだかんだ言って口が悪いよね!?」 っていうかじゃなくてって言いなさいよもうこのおバカぁ! とガイに軽い回し蹴りを食らわせながら一回転する。さすがのガイはそれをピクリともせず見事にケツで受け止め、両手に乗せた包みをまじまじと見つめる。

「え……だったら……その……まさか……!?」
「ふふ……男は手作りに弱い……この理論は完璧なはず!」
、すごいじゃないか、頑張ったな! うむ、しかもうまいぞ!」
「ああ、作ったのは同室のメイドだけどな!?」


ジャキィーン、という効果音を背にくいっと自身に親指を向けるを見て、クッキーをもぐもぐしながら「結局ダメじゃねぇか」とガイは思った。そしてフッ……と息をつくと、「本物の女の子が作ったとなれば100倍はおいしく感じるな」「お前結構マジでひどいよな!?」

毎回からかわれている仕返しである。「だったら返せよな、まったく、喜ぶかと思ってわざわざもらって来てやったのによー」 はぷっと頬を膨らませながらガイが持つ包みに手を伸ばした。けれどもガイはからから笑ったまま、ひょいっと包みを上に上げる。の手は空振りした。「冗談だよ」

「冗談だよ、うまいよ、ありがとう」


ほわりと笑ったガイを見て、は苦虫をかみつぶしたようにじっと彼を見つめた。「お前って、天然タラシだよなぁ、かわいそうに」「なんでいきなり俺は憐れまれているんだ……?」


   ***


「男が弱いものは手作りとロングの髪の毛である!」

お決まりのオープンテラスで、は唐突に宣言した。さきほど頂いた菓子をもぐもぐしながら、「いったいそれはどこ情報だ?」「俺の今までの統計だ!」「手作りはともかく、なんだか偏っているなぁ」 それである。

「でもさぁ、男ってあれじゃん? ホント家庭的な子にはやっぱ弱いわけよ。胃袋からつかめっていうだろォ? まあ他にもいろいろあるけどね、さすがに下ネタになるからやめとくね」
「えらいな、賢くなったじゃないか」
「やっだー、ほめないでよガイさぁーん、つってんだよマジ死ね」
「最後はちょっとドスが聞いててこわかったぞー?」

ドスなんて聞いてないよー、私かわいい女の子だものー、とつんっとガイのおでこを叩くと、どの口がそんなことを言っているんだこの変態くんめー、とのでこにデコピンを打つガイたちを、人々は微笑ましげな顔をして通り過ぎていく。ちなみにデコピンを打たれたは「お、お前ふつうに力つえーんだから手加減しろよマジいてぇ……」とぶるぶるもだえ苦しんでいた。


「その統計はともかくだな、だからはそんなに長い髪をしているのか?」
の髪は、たっぷり腰元まで伸びている。ガイが仕える主よりも長いかもしれない。というかそれは地毛なのだろうか、それともまさか、カツラ……?「地毛だからな! あらぬ誤解を生まぬために!!」

「どぅあってーぇ、カツラとかマジ蒸れるし。長さのびねーから怪しーし、もしぽろりって取れちゃったらヤバヤバじゃん、ところでポロリって響きエロいよね」
「ポロリの響きはともかく、そんなに長くちゃ大変だろう」
「まぁなぁ。トイレでかがむときなんか結構ギリギリの死亡フラグで、ひどいときは髪を首に巻いて」
「ああ、ききたくない、ききたくないー!!」
「自分で聞いてきたくせにー」

まったく、男ったらだらしないわねー、とずるずるオレンジジュースをすするの存在が、もうなんだかよくわからなくなってきた。もぐもぐとクッキーを口に含む。うまい。「言っとくけどなー、これでも一応女になる努力はたんまりしてんだ。喉と肩は出さない服にしてるし、声だって変えてんだぞ」「ああ、唐突に野太くなるけどな」「野太くっていうな!」

はぶくぶくとストローでジュースに息を送り込み、「まったく、画面の前の皆様に勘違いされるだろ? 俺の素敵な美声を届けることができないのが口惜しいぜ」
「時々とは話が噛み合わなくなるなぁ」

ぶくぶくぶく。




  

2011.08.01